株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

ITPとヘリコバクター・ピロリ菌除菌

No.4703 (2014年06月14日発行) P.59

東原正明 (北里大学血液内科教)

登録日: 2014-06-14

最終更新日: 2016-10-26

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

免疫性血小板減少性紫斑病(immune thrombocytopenic purpura:ITP)は,抗血小板抗体産生と脾臓による血小板破壊亢進を病態とする自己免疫性疾患である。軽症では必ずしも紫斑を伴わないため,国際ワーキンググループでは免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia:ITP)という疾患名を提唱している(文献1)。
最近,厚生労働省から治療ガイドが報告された(文献2)。ITPと診断されたら,ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)感染の有無を調べる(ピロリ菌血清抗体,便中抗原,尿素呼気試験)。陽性の場合は除菌を行い,除菌効果,血小板数や出血症状によって経過観察とするか,first line治療であるステロイド療法を開始する。ちなみに,ピロリ菌のCagA抗原やウレアーゼと血小板膜抗原が交差反応をすることがわかっている。
ピロリ菌除菌の有効性は,1998年にイタリアから初めて報告された。わが国ではピロリ菌感染率69%,除菌有効率57%と治療成績が非常に良好である(文献3)。除菌は,クラリスロマイシン,アモキシシリン,プロトンポンプ阻害薬の3種類を,1週間服薬する。除菌6~8週後に除菌効果を判定する。除菌不成功の場合は,二次除菌を試みる。二次除菌は,クラリスロマイシンに代えて,メトロニダゾールを使用する。種々の副作用が出現しやすいステロイド治療を避けられる症例も多く,ピロリ菌除菌療法(2010年,保険適用)は画期的といってよい。

【文献】


1) Rodeghiero F, et al:Blood. 2009;113(11):2386-93.
2) 藤村欣吾,他:臨血. 2012;53(4):433-42.
3) Fujimura K, et al:Int J Hematol. 2005;81(2):162-8.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top