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ノロウイルス感染症対策として手指消毒薬は有効か?【十分な手洗いの上,用いること。有効性評価は消毒薬に記載される試験結果で負荷物を使用しているかどうかがポイント】

No.4790 (2016年02月13日発行) P.62

野田 衛 (国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部 第四室室長)

登録日: 2016-02-13

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

ノロウイルス(Norovirus:NoV)感染症(感染性腸炎)の予防についてご教示下さい。また,NoV感染症に有効な手指消毒薬があるとの話を聞いたことがありますが,それはどういうものでしょうか。 (岐阜県 K)

【A】

NoVは手指,食品,水などを介して経口的に感染後,小腸細胞で増殖し,大便中に排出されます。大便には1g当たり10億個程度のウイルス粒子が含まれるため,手指や環境にごくわずかに付着するだけでも汚染拡大の原因になります。突発的な嘔吐も特徴で,トイレまで我慢できず,室内で嘔吐し環境を汚染します。嘔吐物にも大量のウイルス粒子が含まれており,処理が不十分だと空気中に浮遊し,塵埃感染(空気感染)を起こします。
一方,大便とともにトイレに流されたNoVの一部は,下水→河川水→海水を経由し,カキなどの二枚貝に蓄積されるため,NoVの汚染を受けた二枚貝を生あるいは加熱不十分な状態で喫食すると経口感染が成立します。
以上の感染経路をふまえ,予防法を考えてみましょう。NoVの汚染リスクが最も高い場所は,不特定多数の人が利用する公衆トイレです。発症者は,トイレで勢いよく下痢や嘔吐をするため,容易に便座や周囲の環境を汚染します。
汚染部位に手指が触れると、手指を介してトイレットペーパーホルダー,個室のドアノブや鍵,手洗いの蛇口などのトイレ環境を汚染します。さらにトイレを出た後も手指などを介して,職場でのパソコンのキーボードや通勤電車のつり革などが汚染されることもあります。すなわち,手指が触れる環境はNoVの汚染リスクがあることになります。
これらからの感染を防ぐためには,手洗いが第一です。トイレ後,食事前,帰宅時などには,ハンドソープで十分に泡をたてて,流水でしっかりと洗い流す。この動作を2回繰り返すことが有効です。
家族にNoV感染者が出た場合には,タオルの共用は避け,入浴順にも注意を払います。感染者が調理すると食品を汚染し,食中毒になる場合があるので,注意しましょう。嘔吐物などで衣類が汚れた場合には,熱湯消毒後,十分に洗剤で洗い,温水で濯いだ後,十分に乾燥させます。汚染した床や絨毯などは素材にもよりますが,汚染物を物理的に可能な限り取り除いた後,アイロンなどで熱を加えるなどしてウイルスを不活化し,最後に有効な消毒薬を使用します。汚染物処理を行う場合は,手袋とマスクを着用し,部屋は十分に換気します。カキの生食は控え,カキフライは170℃程度の低めの温度でじっくり揚げ,余熱を利用するのがよいです。
NoVは培養できず,消毒薬の有効性評価が困難なため,代替ウイルスの評価試験から有効性を推定しているのが現状です。それをふまえて,NoVに有効と思われる手指消毒薬が市販されています。具体的な商品名は控えますが,不活化効果に明確な根拠があれば,有効性評価結果〔用いた病原体,試験法,有効性(1/1万程度の減少は期待したい)〕が記載されている場合が多いので,それを参考にして下さい。消毒効果は有機物の存在に影響を受けるので,評価試験に負荷物(血清,ペプトン,牛肉エキスなど)を使用しているかは重要なポイントです。ただし,手指消毒薬だけに頼るのは禁物で,十分な手洗いの後に手指消毒薬を使用することが大切です。

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