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自転車で歩道を走行する者への法的措置はどうなっている?【改正された道路交通法に基づく規制と実態】

No.4782 (2015年12月19日発行) P.66

岡田友佑 (北千住法律事務所 弁護士)

登録日: 2015-12-19

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

健康志向の風潮からか自転車がずいぶん増えてきているように思います。それはいいのですが,走行時のマナー,道路交通法の遵守などがまったくいい加減な感じがします。自動車のように走行音がないので,後ろからすぐ脇をすり抜けられてびっくりしたのは私だけではないはずです。歩道の右側をあたかも歩行者のように走行するのは日常茶飯事。おそらく信号無視でしょう,交差点で警察官に止められている自転車はよく目にしますが,歩道上で検挙されているのを見たことがありません。自転車の道路交通法や違反検挙の実態をご解説下さい。 (石川県 K)

【A】

自転車は,運転免許制度などがなく,気軽に運転できる乗り物ですが,その反面,交通ルールを学ぶ機会はほとんどありません。
近年,重大な自転車事故が多発していることから,自転車の違法運転を取り締まるため,2015(平成27)年6月1日に改正道路交通法が施行されました。そこで,改めて自転車の交通ルールを確認しましょう。
[1]自転車は車道通行が原則
自転車は「車両」であり,原則として「車道を通行しなければならない」こととされています(道路交通法第17条第1項本文)。もちろん,左側(左側端)通行です(同条第4項,同法第18条第1項本文)。
[2]歩道を通行できる場合
例外的に,(1)道路標識等により歩道を通行することができることとされているとき,(2)運転者が児童・幼児のほか70歳以上の者・身体障害者などのとき,(3)車道または交通の状況に照らして(客観的に)歩道を通行することがやむをえないと認められるとき,には歩道を通行することが認められています(同法第63条の4第1項各号)。
そして,歩道を通行する場合には,歩道の中央から車道寄りの部分を徐行し,歩行者の通行を妨げることとなるときは一時停止しなければなりません(同条第2項本文)。徐行とは,大人の速足程度,ふらつかない程度に走行できる最も遅い速度,などと言われています。
[3]その他の一般的な規制
上記以外にも,道路交通法によって信号無視や酒気帯び運転等が禁止されており,また,各都道府県の条例によって,携帯電話や傘,イヤホンなどを使用しながらの運転などが禁止されています。
[4]違反した場合
自転車の交通違反の場合には,交通反則通告制度(いわゆる青切符)の適用がなく,軽微な違反であっても刑事罰を科すことしかできないため,取り締まりを行いにくいという問題がありました。
そこで,今回の法改正で「自転車運転者講習」という制度を設け,3年以内に2回以上の危険行為を行った場合,自転車運転者講習の受講命令を科せることとし(命令に従わないと5万円以下の罰金),自転車の交通違反の実態に応じた取り締まりを行うことができるようになったのです。
[5]検挙の実態
今回の道路交通法の改正によって,自転車の違反に対する取り締まりは増えているようです。もっとも,質問者のおっしゃる通り,警察も取り締まりの実を上げる必要がありますので,交差点付近において行うことが多く,歩道上で取り締まるということは少ないでしょう。
警察でも,自転車の交通ルールを徹底させようとしていますので,ぜひお近くの警察署などに,日時・場所・違反事実などを伝えて,取り締まりを強化してもらうよう相談することをお勧めします。

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