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ABCG2機能低下者における痛風発症リスク

No.4706 (2014年07月05日発行) P.66

市田公美 (東京薬科大学病態生理学教室教授)

登録日: 2014-07-05

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

ABCG2の機能低下者では,便中への尿酸排泄量は低下するが,尿中尿酸排泄量は増加し,700mg/1.73m2/日に達するとの報告もある。しかし,ABCG2の機能低下者は,その程度により,尿中尿酸排泄量が増加しても痛風の発症リスクが高まるのはなぜか。 (千葉県 K)

【A】

ヒトの体内の尿酸プールは,成人男性で約800~1700mg,平均1200mgであり,成人女性は550~700mgと言われている。壊れた細胞から放出されるプリン体や,新規に合成されたり食事で摂取するプリン体により,1日当たりおよそ700mgのプリン体が尿酸プールに流入することになる。それと同じ量の尿酸が体外に排泄されることにより,血清尿酸値はほぼ一定に保たれている。
体外に排泄される尿酸の約7割が腎臓から,残りのほとんどは消化管から排泄される。尿酸は細胞膜を自由に通過できないことから,この尿酸排泄には,尿酸を輸送する尿酸トランスポーターが関与している。
尿酸トランスポーターの中で,ABCG2は小腸,肝臓や腎尿細管などの多くの組織に発現し,腎臓から尿中への尿酸分泌や,消化管の管腔内への尿酸分泌を行い,尿酸の排泄に重要なトランスポーターであることが明らかになっている。日本人は,このABCG2の機能低下を引き起こす一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)の頻度が高く,このSNPを持っていると高尿酸血症をきたしやすくなる(文献1)。
ABCG2の機能低下により,ABCG2を介した腎臓や消化管からの尿酸分泌は減少する。腎臓では,ほかの尿酸トランスポーターが存在することから,消化管からの尿酸排泄の減少を補うように,ほかの尿酸トランスポーターを介した尿酸排泄の増加が認められる(文献2)。そのときに,ほかの尿酸トランスポーターを介した尿酸排泄が十分に行われれば,高尿酸血症をきたすこともなく,痛風の発症リスクは高くならない。しかし,ほかの尿酸トランスポーターを介した尿酸排泄が十分に行われず,ABCG2の機能低下を補いきれない場合,高尿酸血症をきたし,痛風発症のリスクは上昇する。
ある特殊な状態を除いて,ABCG2の機能低下を引き起こすSNPを持っている人も,持っていない人も,ほかの尿酸トランスポーターに関する遺伝因子はほぼ同じように持っていると考えることができる。その場合,血清尿酸値の制御に対するABCG2の寄与度,または,ほかの尿酸トランスポーターのABCG2機能を補完する能力により,ABCG2機能低下があった場合に高尿酸血症をきたしやすいかどうかがわかることになる。
つまり,ABCG2の機能低下をきたすSNPを持っていると痛風・高尿酸血症の発症リスクが高くなるという事実は,血清尿酸値の制御に対するABCG2の寄与度が高いことやほかの尿酸トランスポーターがあまりABCG2機能低下を補完しきれていないことを意味している。ABCG2の機能低下をきたすSNPを持っている人が必ず高尿酸血症をきたすわけではなく,痛風・高尿酸血症の発症リスクが高くなるだけである。
血清尿酸値の上昇には,ABCG2以外の遺伝子や飲酒,食事内容などの生活習慣や肥満も関与している。ABCG2の機能低下をきたすSNPを持っている人に対する生活習慣の指導がより重要であると思われる。

【文献】


1) Matsuo H, et al:Sci Transl Med. 2009;1(5):5ra11.
2) Ichida K, et al:Nat Commun. 2012;3:764.

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