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去勢抵抗性前立腺癌に対する新規治療薬

No.4768 (2015年09月12日発行) P.59

中神義弘 (東京医科大学病院泌尿器科講師)

登録日: 2015-09-12

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

最近,わが国でも去勢抵抗性前立腺癌(cas-tration resistant prostate cancer:CRPC)に対する新規薬剤が数種類使用できるようになりました。一般的にcombined androgen blockade(CAB)療法を行った後の再発にはドセタキセルによる化学療法が標準化していたわけですが,上記の新規薬剤の登場で現在までの前立腺癌に対する治療パラダイムが大きく変化すると思われます。一方で,まだ十分なエビデンスがない状態とは思いますが,どのような方針でCRPCに対する治療が行われているのでしょうか。東京医科大学・中神義弘先生のご教示をお願いします。
【質問者】
木村将貴:帝京大学医学部附属病院泌尿器科講師

【A】

CRPCに対する治療は,ドセタキセルによる治療が主流ですが,2014年に入り,わが国では3つの新規薬剤が保険収載となりました。アビラテロン(ザイティガR ),エンザルタミド(イクスタンジR ),カバジタキセル(ジェブタナR )の3剤です。
[1]アビラテロン
アビラテロンはCYP17活性を不可逆的かつ選択的に阻害し,精巣,副腎および前立腺腫瘍組織内におけるアンドロゲン合成を阻害します。ステロイドの併用が必要です。転移を有する化学療法施行後のCRPCに対し使用したCOU-AA-301試験では,プラセボ+プレドニゾロンに対して予後の有意な延長(15.8カ月vs. 11.2カ月)を認めました。副作用は有意なものを認めませんでした。
[2]エンザルタミド
エンザルタミドは,アンドロゲン受容体(androgen receptor:AR)のシグナル伝達阻害作用を有する抗アンドロゲン薬です。作用機序は,(1)細胞質内でARと結合しアンドロゲン結合を阻害する,(2)核内でARとDNAの結合を阻害し,AR標的遺伝子の転写を抑制する,(3)ARとコアクチベーターとの結合を促進しないことから,ARのシグナル伝達が阻害され,細胞増殖ができず,腫瘍は縮小します。転移を有する化学療法施行後のCRPCに対し使用したAFFIRM試験では,プラセボに対して予後の有意な延長(18.4カ月 vs. 13.6カ月)を認めました。副作用として痙攣に注意が必要です。
[3]カバジタキセル
カバジタキセルは,チューブリン重合を促進し,微小管を安定化することによって細胞分裂を阻害し,細胞死を誘発,腫瘍増殖を抑制します。ドセタキセル治療歴のあるCRPCに対し使用したTRO PIC試験では,ミトキサントロン+プレドニゾロンに対して予後の有意な延長(15.1カ月 vs. 12.7カ月)を認めました。ただし,副作用として好中球減少症が94%に,発熱性好中球減少症が8%に生じています。また,投与後30日以内の死亡を5%に認めたことから,使用には十分に注意が必要です。
[4]各薬剤の使いわけ
アビラテロンおよびエンザルタミドに関しては,その後,化学療法未治療の転移性CRPCに対するCOU-AA-302試験,PREVAIL試験が行われ,同薬剤の有用性が示されました。2015年のNCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインでは,転移を有するCRPCに対する治療は,内臓転移ありではドセタキセルおよびエンザルタミドが推奨されているのに対し,内臓転移なしではエンザルタミド,アビラテロン,ドセタキセルが推奨されています。米国泌尿器科学会のCRPCに対する治療ガイドラインでは転移の有無や場所,症状の有無などをもとに新薬の使用方法を呈示しています。
どの薬剤を先行させ,どの順番で使用するかについては,交差耐性も言われており,今後の大規模な臨床研究が望まれます。最近では,血液中循環腫瘍細胞におけるandrogen receptor splice variant-7(AR-V7)の発現が多い場合,エンザルタミドやアビラテロンの効果が悪いとの研究もあり,今後,個別化医療に結びつく可能性があります。明らかに経験では先行している米国あるいは欧州における治療戦略を参考にしながら治療にあたるべきと考えます。

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