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都市部の専攻医に定員上限を設定 - 厚労省が混乱回避の対応方針を提示 [新専門医制度]

No.4806 (2016年06月04日発行) P.10

登録日: 2016-06-04

最終更新日: 2016-12-06

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【概要】地域医療への影響を懸念する声が出ている新専門医制度について、厚生労働省は5月30日の「専門医養成の在り方に関する専門委員会」(永井良三委員長)で、現在の後期研修医の配置状況からの激変や偏在を回避するため、専攻医の募集定員数に上限を設定する方針を提示した。


厚労省の提示した対応方針(表)は、前回の会合で、永井委員長が「私案」として示した方向性に基づき作成。都道府県ごと、診療領域ごと、プログラムごとに専攻医の募集定員に上限を設定し、都市部では現状で受け入れている後期研修医の数を超える募集は認めないとしている。
これらはすべて「制度を試行的にでも、予定通り来年度から運用するためのもの」(同省医政局医事課)で、2017年度に限った方針。18年度以降の専門医養成の在り方は、同委員会で議論する。

●18学会の専門医養成方針を調査
会合では前回に引き続き、新専門医制度や日本専門医機構の仕組みそのものへの批判が噴出した。
参考人として出席した島田眞路氏(日本皮膚科学会理事長・山梨大学長)は、厚労省の方針に対し、「都市部の上限をもっと厳しくしないと地域偏在は不可避だ」と指摘。さらに、専門医機構が各学会の研修プログラムを審査・認定する仕組みに触れ、「素人の『ああしろ、こうしろ』という指図に専門家が従わざるをえない。こんな制度で質の高い専門医は育たない。従来の研修プログラムでよいという学会もある」と、激しい批判を展開。
会合終盤には、島田氏を含む複数の委員が、永井委員長の制止を半ば振り切る形で「今ここで制度開始の延期を決定すべき」と主張するなど、議論は紛糾した。
一方で、永井委員長は「新たな研修プログラムで動くつもりの学会もあると聞いている」とし、「各学会の意向を踏まえる必要がある」と総括。同省が基本領域の18学会に対し、従来の専門医養成を継続したいか、新制度の研修プログラムを実施したいか、来年度の方針を調査することとなった。

●調整のタイムリミットは秋
新専門医制度に医師のプロフェッショナル・オートノミーによる運営という理念がある以上、厚労省の「方針」に強制力はない。しかし、早期に来年度の方針を決定できなければ、現在2年目の初期臨床研修医の混乱がさらに大きくなることは必至だ。
同省は秋頃をタイムリミットとして、関係者間の「調整」を急ぐ。


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