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顕微鏡的多発血管炎(MPA)[私の治療]

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  • ▶治療の実際

    【寛解導入療法】

    プレドニン錠(プレドニゾロン)1mg/kg/日で開始。開始3カ月後に7.5~10mg/日まで漸減する。

    一手目 :体重50kgの場合:プレドニン5mg錠(プレドニゾロン)1日10錠 分2(朝食後の内服量を多くする。例:朝食後6錠・昼食後4錠),以下の①または②を併用

    ただし副作用リスクが高い場合,限局型で重症臓器病変がない場合は,プレドニゾロン単独治療を考慮する。


    ①エンドキサン注(シクロホスファミド水和物)1回15mg/kg*1,2(2時間かけて点滴静注)を6回*3。最初の3回は2週間隔*2,その後3週ごとに3回*3

    *1:出血性膀胱炎の予防として,投与当日は十分な水分投与のもと尿量確保に努める。
    *2:投与量は,年齢および腎機能に応じて,7.5~15mg/kg/回に調整2)
    *3:投与間隔は,忍容性を考慮して,適宜調整2)


    ②リツキサン注(リツキシマブ)1回375mg/m2を1週間隔で4回(点滴静注)

    〈高用量プレドニゾロンを使用できない場合〉

    一手目 :上記①または②,タブネオス10mgカプセル(アバコパン)1回3カプセル1日2回(朝・夕食後)併用

    〈シクロホスファミドやリツキシマブを使用できない場合〉

    一手目 :〈重症臓器病変がなく,腎機能障害が軽微な場合〉プレドニゾロンに以下(③)を併用
    ③メトトレキサート2mg錠(または2mgカプセル)1日3~4錠(カプセル)分1~2(朝食後または朝・夕食後)週1回で開始。腎機能や年齢を考慮の上,必要に応じて10~16mg/週まで増量(保険適用外)。副作用予防のために,48時間後にフォリアミン5mg錠(葉酸)1回1錠(朝食後)併用

    一手目 :〈重症臓器病変がある,または腎機能障害が軽微でない場合〉プレドニゾロンに以下(④)を併用
    ④ミコフェノール酸モフェチル250mgカプセル(ミコフェノール酸モフェチル)1回1カプセル1日2回(朝・夕食後)から開始。年齢,病状により適宜増減,1回4~6カプセルまで増量(保険適用外)

    二手目 :〈重症な腎機能障害を伴う場合〉上記いずれかの治療に血漿交換を併用

    血漿処理量は60mL/kgまたは1.0~1.5×循環血漿量程度に設定。1クール(2週間に限る)に7回を限度として2クールまで実施可能。

    【寛解維持療法】2)

    寛解導入後は,グルココルチコイドを維持量(プレドニゾロン換算5mg/日以下)で治療する。4~6カ月後の寛解達成後に,以下の免疫抑制薬を併用する。

    〈寛解導入療法の終了後〉

    一手目 :リツキサン注(リツキシマブ)1回375mg/m2を1週間ごとに2回(点滴静注),以降は6カ月ごとに1回,患者の状態を観察しつつ,2~4年間継続

    一手目 :アザニン50mg錠もしくはイムラン50mg錠(アザチオプリン)1回0.5~1錠1日1回(朝食後)で開始。忍容性をみて2錠まで増量可(NUDT15遺伝子多型の検査を行った上で,投与の是非・投与量を検討)

    二手目 :〈リツキシマブやアザチオプリンを使用できない場合〉上記③を投与

    ▶専門家へのコンサルト

    高齢者で発熱,炎症反応高値を認め,紫斑,筋痛,末梢神経障害,胸部異常陰影,腎障害など諸臓器の障害を認めた際は,本疾患を念頭に速やかに専門施設へコンサルトする。腎不全・呼吸不全・四肢の運動麻痺など不可逆的障害が生じる前に,治療介入することが重要である。

    【文献】

    1難病情報センター:顕微鏡的多発血管炎.
    https://www.nanbyou.or.jp/entry/86

    2)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班, 他, 編:ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023. 診断と治療社, 2023.

    五野貴久(日本医科大学大学院医学研究科アレルギー膠原病内科学分野准教授)

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