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[Web医事新報チャンネル]漢方は限界を突破する武器になる【シリーズ・漢方医学をどう教える?どう学ぶ?】(樫尾明彦×小川恵子×野上達也×大橋博樹)

No.5199 (2023年12月16日発行) P.14

登録日: 2024-01-16

最終更新日: 2024-02-21

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医師・医療従事者向け動画配信サービス「Web医事新報チャンネル」では、プライマリ・ケア医のニーズを満たす漢方医学教育のあり方を考えるシリーズ「【PC医×指導医】漢方医学をどう教える?どう学ぶ?」(全4回)を公開中。12月12日から配信を開始した第4回「漢方は限界を突破する武器になる」では、樫尾明彦氏(給田ファミリークリニック副院長)の進行により漢方医学の専門家である小川恵子氏(広島大病院教授)、野上達也氏(東海大医学部准教授)、プライマリ・ケアの専門家である大橋博樹氏(多摩ファミリークリニック院長)が総括的な討論を展開しています。本欄では討論の最後のパート(Chapter 4)を中心に見どころをダイジェストで紹介します。(討論は11月9日に収録しました)


樫尾 明彦(かしお あきひこ)
給田ファミリークリニック副院長
2004年聖マリアンナ医大卒。和田堀診療所所長などを経て、2017年より現職。昭和大学兼任講師。聖マリアンナ医大非常勤講師(総合診療内科学)。日本東洋医学会学術教育委員。日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医。

小川 恵子(おがわ けいこ)
広島大学病院漢方診療センター教授
1997年名古屋大卒。金沢大病院漢方医学科臨床教授、天津中医薬大客員教授、広島大病院総合内科・総合診療科漢方診療センター特任教授などを経て、2022年より現職。日本東洋医学会指導医。日本外科学会専門医。日本小児外科学会専門医。

野上 達也(のがみ たつや)
東海大学医学部専門診療学系漢方医学准教授
1998年富山医薬大(現富山大)卒。富山大病院和漢診療科助教、富山大院和漢診療学講座助教、富山大病院診療講師などを経て、2020年より現職。日本東洋医学会専門医・指導医。日本内科学会総合内科専門医。日本リウマチ学会リウマチ専門医。

大橋 博樹(おおはし ひろき)
多摩ファミリークリニック院長
2000年獨協医大卒。川崎市立多摩病院総合診療科医長などを経て、2010年より現職。日本プライマリ・ケア連合学会副理事長。東京医歯大臨床教授。聖マリアンナ医大臨床教授。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医。

もっと早く漢方の勉強をしてもいいのでは

樫尾 本シリーズの第1回~第3回の議論でいろいろな意見が出たのですが、「若いうちはまず西洋医学を勉強し、漢方の勉強はその後にすればいい」といったご意見や、「学生の時に漢方を学んでも、初期研修の間に漢方から離れるため距離ができてしまう」といったご意見がありました。先生方はどうお考えですか。

小川 私は(初期研修の間は西洋医学の臨床に専念すべしという)加島雅之先生(熊本赤十字病院総合内科部長:シリーズ第3回に出演)のおっしゃることに大筋で賛成なのですが、(初期研修の間に漢方から離れると)モチベーションが落ちるんですよね。西洋医学も勉強すれば面白いので、「漢方も勉強してほしいな」と思っていても相当後になってしまう場合がある。気長に見ればいいのかもしれませんが、もう少し早く勉強してもいいのではないか、そんなに禁止しなくてもいいのではないか、というのが私の意見です。

若い時から(西洋医学の)限界を感じてすぐに漢方の勉強をすればいいのですが、後で勉強すると「古典まで勉強するのか」といった感じになって少し情熱が下がってしまう。例えば急性期で抗生剤は使わなくてもいいような状態の時に漢方の出番がありますが、そのような限定的な場面で(漢方を)使って勉強することによってモチベーションを維持する、といった教育上の工夫が必要だと思うのですけれど、いかがですか。

学びたいタイミングで教えられる仕組みを

野上 私は富山大学和漢診療学講座に入局して漢方医としてやっていこうという立場でスタートしたのですが、最初の3年間の内科研修の時は「一切漢方薬を使うな」と言われて使いませんでした。その前に1年間、漢方医学にどっぷり浸かる期間があったのですが、西洋医学は何ができて何ができないのか、ある程度わかってからじゃないと「漢方薬をしっかり使いたい」という渇望が生まれてこないところもあります。渇望が生まれてきた時にしっかりと教えるシステムがなくて、独学で勉強してみたけれどあまりうまくいかずモチベーションが落ちてしまうというところがある。その人が学びたいと思ったタイミングでしっかり教えられる仕組みをつくることが大事かなと思っています。

日本東洋医学会の専門医試験を受けられる方の平均年齢はだいたい45歳くらいです。40を過ぎてから漢方を深く勉強したいと思った先生方が専門家になって日本の漢方を支えているのが現状だと思います。

大橋 プライマリ・ケア(PC)でも同じようなことがあります。学生時代にPCにすごく興味があったのだけれど、初期研修でPCから離れてしまい結局選ばないまま終わって、例えば○○内科に入った後にやはりPCをやりたくて戻ってきたといった話がある。

学生時代に「漢方医学の方向に進みたい」と言っている方に、何かモチベーションを落とさないような方略だけでも残っているといいのかなと思います。

小川 先生方のご意見、すごく参考になりました。

野上先生もおそらく(漢方医学に)1年間浸かった時期があったからよかったのだと思うんですよ。確かにその時期が別に学生時代でもいいわけですよね。カリキュラムがなかなか厳しいので奪い合いですけれど、大学の中でそういう時間をつくる努力をしていくというのがある意味答えなのかもしれないと思います。いつでもいいけれど、西洋医学に浸かる前にある程度集中して漢方の勉強をする機会があるという状況をつくれるように考えてみたいと思います。

樫尾 今の学生は、(「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に『和漢薬を概説できる』という記載が入った)2001年よりも前に卒業したドクターよりは(学生時代に漢方を学んだ)素養があり、西洋医学に少し行き詰まりを感じた時に「ここで使えるのは漢方なんじゃないの」と思える可能性があるかもしれないですね。

最後に、若手のPC医・総合診療医に向けてメッセージをお願いします。

漢方医学は「強い武器」になる

小川 PC医を目指す先生方が西洋医学に限界を感じた時に漢方医学は強い武器になると思いますので、ぜひ勉強していただきたいと思います。もし勉強する時に迷われたら、広島大学はいつでも歓迎します(笑)。

野上 学生時代から合わせると約30年漢方の勉強をしていますが、確実に言えることは、漢方薬で良くなる患者さんはたくさんいます。勉強するかしないかは、そういう患者さんに出会うことが大事なので、目の前で困っている患者さんがいた時には、漢方の得意な先生に相談するとか自分で漢方薬を使ってみるとか、まずチャレンジしてもらいたいと思います。そこでしっかり効くということが経験できれば勉強しようという気持ちが生まれてくると思います。良くなる症例を1例でも経験し、漢方を勉強したいなという気持ちを持っていただけたらというのが私の率直な願いです。

多くの患者をハッピーにできる分野

大橋 PC、総合診療の専門医を取った後にどのようなキャリアを積むかというのが最近若い人たちの間で話題になるのですが、感染症の勉強をしたり緩和ケアの勉強をしたり、先に進むような勉強するのに臓器横断的なものを選ぶ方が多いんですね。そういった観点から言うと、漢方はまさに全身を診るし、漢方医学ほどより多くの患者さんをハッピーにできる分野はない。ぜひ若い人にはおすすめしたいと思います。

確かにとっかかりの難しさはありますが、ここは教育が解決できる問題だと思います。

樫尾 皆さん、ありがとうございました。

【関連動画:「漢方医学をどう教える?どう学ぶ?」シリーズ】
第1回「総合診療と漢方は親和性が高い!」(樫尾明彦×吉永 亮×安田雄一×蜂木麻璃奈)
第2回「卒前教育・初期研修で漢方を学ぶ」(樫尾明彦×有田龍太郎×蜂木麻璃奈)
第3回「学べばその先に豊饒の海が」(樫尾明彦×加島雅之×蜂木麻璃奈)
第4回「漢方は限界を突破する武器になる」(樫尾明彦×小川恵子×野上達也×大橋博樹)

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