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顔面・頸部外傷[私の治療]

No.5175 (2023年07月01日発行) P.32

葉 季久雄 (平塚市民病院救急科部長兼救急外科部長)

登録日: 2023-07-03

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  • 顔面・頸部には重要器官が位置する。重要器官の損傷が気道(A)・呼吸(B)・循環(C)・中枢神経(D)を脅かす。ABCDの評価が重要であり,異常時は迅速な対処を要する。

    ▶病歴聴取のポイント

    受傷機転:鋭的外傷か,鈍的外傷か。

    現場の状況:外出血量を確認し,同時に受傷した傷病者がいる場合はその程度を確認する。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    ABCDEアプローチにのっとり,primary surveyを行う。特にA・Bが脅かされる危険性が高く,ショックバイタルを見逃さない。

    【身体診察】
    〈顔面外傷〉

    鼻腔,口腔,外耳道の出血所見を確認する。鼻腔・口腔出血により気道閉塞をきたすことがある。鼻出血は顔面骨骨折の一徴候であることもある。髄液鼻漏の有無も確認する。口腔出血は,口腔内創部,舌損傷部,下顎骨開放骨折部から生じる。外耳道からの出血は,鼓膜破裂を伴う中耳の損傷,側頭骨骨折,下顎骨関節突起骨折による外耳道裂傷により生じる。髄液耳漏の有無も確認する。

    触診(圧痛,感覚障害,顔面骨の轢音・安定性の確認)は必須である。開口障害・咬合障害を確認する。

    顔面腫脹を伴う場合,時間経過とともに腫脹が進行し,眼球の観察が困難になる。早期に視機能の評価(視力,眼球周囲所見,視野,眼球運動,瞳孔所見,複視の有無)を行う。

    眉毛外側部の外傷に視力低下,片側の瞳孔散大,対光反射の異常を伴う場合,視神経管骨折を疑う。

    唾液腺が存在する頬部,顎下部に創を有する場合は,唾液腺損傷の評価を行う。

    涙道の開口部が存在する眼瞼内眼角部に創を有する場合は,涙小管損傷の評価を行う。

    顔面の片側麻痺があり,耳下部から外眼角部に創を有する場合は,顔面神経損傷の評価を行う。

    眼窩周囲(パンダの眼徴候),耳介後方の乳様突起部(バトル徴候)の皮下出血斑は頭蓋底骨折の合併を示唆する。

    〈頸部外傷〉

    ハードサイン(活動性出血,拡大するまたは拍動性の血腫,神経障害,bruit/thrillの聴取,気道異常,創からの泡沫,大量皮下気腫)を確認する。ソフトサイン(拡張傾向にない血腫,低血圧の既往,皮下気腫,喀血,嗄声,吐血,嚥下障害,嚥下痛)を確認する。

    広頸筋を貫く開放創は3つのゾーンにわけられる。zoneⅠは鎖骨から輪状軟骨の間(椎骨動脈と総頸動脈近位側,肺,気管,食道,胸管,脊髄,主要な頸髄神経幹),zoneⅡは輪状軟骨と下顎角の間(頸静脈,椎骨動脈,頸動脈,気管,食道,脊髄,喉頭),zoneⅢは下顎角と頭蓋底の間(咽頭,頸静脈,椎骨動脈,内頸動脈遠位部)である。損傷に対するアプローチ,評価すべき臓器を把握する。

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