株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「総会のパネル展示『地域包括ケアとICT』から」土屋淳郎

No.5167 (2023年05月06日発行) P.24

土屋淳郎 (医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)

登録日: 2023-04-10

最終更新日: 2023-04-10

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

第31回日本医学会総会2023東京がこの4月に開催され、当会ではこの博覧会のコミュニティクリニックのブースにおいて「地域包括ケアとICT」のパネル展示および事例動画の放映を担当した。実際に会場で視聴していただけたならば幸いであるが、ここではパネル展示の内容について紹介したい。

パネルの1つめは「コミュニケーションで患者を支える医療介護専用SNS」がテーマである。在宅医療における患者情報は、10年前までは電話やFAX、連絡ノートや紹介状でやり取りしていたが、現在では医療介護専用SNSを用いて、患者ごとに作られた多職種連携チームが時間や場所の制限を受けることなく情報共有を行えるようになってきた。取り扱う情報も、いまは画像・動画や自動送信されるバイタルデータなど多岐にわたるが、とりわけ重要なのはコミュニケーション情報だと考えられている。病院や行政の職員など関わる職種も多くなり、より有意義な多職種連携が行えるようになってきた。これらの事情により入院や入所を減らす取り組み、災害時にも威力を発揮する取り組み、行政区を超えた連携の取り組みなど、次のステージに進む地域の事例もみられるようになってきたことを紹介している。

パネルの2つめは「ICTを活用した患者の医療アクセスとオンライン診療利用シーン」がテーマである。コロナ禍の医療ICT/DXにおいて最も注目されたオンライン診療は、働く世代や子育て世代での利用が一般的と考えられているが、コロナ禍では感染対策としての利用が広まり、これからは通院が困難になってきた高齢者や在宅医療といった地域包括ケアのシーンにおいての利用も広まるだろう。高齢者のオンライン診療には支援が必要な場合も多いが、既にD to P with Nといった形で訪問看護師が支援して行われており、これからは家族や介護職などが支援する形も増えると予想される。ICTの利用により患者の状態に応じて適切な医療アクセスを選択できることや、PHR(personal health record、患者自身が管理する健康情報)やWeb問診などの患者と医療をつなげる仕組みの発展に伴い、診療形態は次のステージに進んでいくはずである。これらの現状や将来像を紹介している。

医療ICT/DXはコロナ禍で進んだ側面もあるが、やはりそのベースには顔の見える連携や職種の壁を越えた連携が必要で、これからはそれらを前提とした仕組みづくりも重要だと考えている。このため当会では全国大会や情報交換会などの顔の見える会も開催している。パネルの内容に加えてここでは紹介できない事例の動画なども併せて、当会公式サイト1)で確認いただけると幸いである。

【文献】

1)全国医療介護連携ネットワーク研究会公式サイト.
https://ikairen.net/

土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[医療介護専用SNS][患者の医療アクセスとオンライン診療]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top