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日本国内におけるサル痘の流行 [感染症今昔物語ー話題の感染症ピックアップー(9)]

No.5161 (2023年03月25日発行) P.17

石金正裕 (国立国際医療研究センター病院国際感染症センター/AMR臨床リファレンスセンター/WHO協力センター)

登録日: 2023-03-25

最終更新日: 2023-03-23

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世界におけるサル痘のアウトブレイク

サル痘(mpox)は,オルソポックスウイルス属のサル痘ウイルス感染症で,1970年にヒトでの感染が発見されて以来,中央アフリカから西アフリカにかけて流行しています。2022年5月16日に,英国から海外渡航歴のないサル痘の複数例の報告がありました。その後,欧米中心に感染拡大を続けたため,7月23日に,WHOはサル痘を国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(public health emergency of international concern:PHEIC)と宣言し,世界中で感染対策を継続しています。

2022年1月1日から2023年2月27日までに,WHOからは,欧米中心に110カ国と地域で8万6173例の確定例,100例の死亡例が報告されています。死亡例の主な国は,米国34例,ペルー15例,ブラジル15例です。WHOの報告では,年齢は中央値34歳(四分位範囲:29〜41歳),0〜17歳が1.1%,0〜4歳が0.3%です。85.5%が最近1人または複数と性交渉を経験した男性間の性交渉を行う者(men who have sex with men:MSM)で,68.8%が性交時の皮膚・粘膜接触,67.9%が性的接触のあるパーティーでの感染が疑われています1)。2023年以降は緩やかな減少傾向にあったため,2023年2月9日に,PHEICを継続するかどうかの緊急委員会が開催されました。委員会は,少数の国では引き続き感染が持続していること,一部の地域では,感染者の検査と確定症例報告が不十分である可能性が高いと判断し,PHEIC継続と判断しました2)

●日本におけるサル痘は2023年1月以降に増加傾向

日本ではPHEIC宣言の2日後の2022年7月25日に,海外渡航歴があるサル痘患者の1例目が報告されました。感染拡大する欧米と異なり,それ以降は散発的な感染例の報告があるだけで,2022年12月末までに報告された患者数はわずか8例でした。しかしながら,2023年1月以降に報告数が増加し,2023年3月14日までに合計45例のサル痘の感染者が報告されています2)

厚生労働省のホームページに公開されている情報によると,45例全例が男性で,年代は,20代9例,30代18例,40代16例,50代1例,60代1例です。海外渡航歴は4例に認め,残りの41例には認めていません。居住地域は,東京都34例,神奈川県4例,埼玉県3例,千葉県2例,海外2例と関東中心です。3例を除いた42例に何らかの症状を認め,有症状42例における臨床症状は,発疹41例(97.6%),発熱27例(64.3%),倦怠感15例(35.7%),リンパ節腫脹13例(31%),頭痛9例(21.4%),咽頭痛6例(14.3%),筋肉痛5例(11.9%),下痢1例(2.4%),肛門直腸痛1例(2.4%)です。幸いにも報告時の状態は,45例全例が安定と報告されています3)

●まとめ:国内におけるサル痘の流行に注視しよう!

・世界的にはサル痘の感染者の報告数は減少傾向〜横ばいですが,日本における報告数は増加傾向です。

・サル痘を疑ったら,保健所へ連絡を行い,PCR検査のための皮疹を採取し,地方衛生研究所や国立感染症研究所等と相談します。

・サル痘を疑ったら,接触感染,飛沫感染,空気感染対策を正常な皮膚に覆われるまで行います。

【参考文献】

1) WHO:Multi-country outbreak of mpox, External Situation report # 17 - 2 March 2023.

2) WHO:Fourth meeting of the International Health Regulations (2005) (IHR) Emergency Committee on the Multi-Country Outbreak of monkeypox (mpox). 

3) 厚生労働省:サル痘について.

石金正裕 (国立国際医療研究センター病院国際感染症センター/ AMR臨床リファレンスセンター/WHO協力センター)

2007年佐賀大学医学部卒。感染症内科専門医・指導医・評議員。沖縄県立北部病院,聖路加国際病院,国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)などを経て,2016年より現職。医師・医学博士。著書に「まだ変えられる! くすりがきかない未来:知っておきたい薬剤耐性(AMR)のはなし」(南山堂)など。

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