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多発血管炎性肉芽腫症(GPA)[私の治療]

No.5152 (2023年01月21日発行) P.44

神田浩子 (東京大学大学院医学系研究科免疫疾患治療センター准教授)

登録日: 2023-01-21

最終更新日: 2023-01-17

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  • 多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)とは,上気道(眼,耳,鼻,咽頭,副鼻腔:E=ear and nose)および肺(L=lung)の炎症性肉芽腫,腎(K=kidney)の壊死性糸球体腎炎,小~中血管の壊死性血管炎,の3つを臨床病理学的特徴とする。わが国の疫学調査では,やや女性に多く,好発年齢は40~60歳である1)。従来,ウェゲナー肉芽腫と呼ばれてきたが,2012年チャペルヒル国際会議でGPAと改称された。

    ▶診断のポイント

    症状は,発熱,体重減少,全身倦怠感,筋痛,関節痛という全身症状に,E,L,Kの順に症状が出現する。E,L,Kすべての症状がそろう場合を全身型といい,1つのみもしくは2つの場合を限局型という。その他,紫斑,多発関節炎,多発神経炎など血管炎の症状を呈する。

    血液検査では,炎症反応高値,PR3-ANCA陽性(50%程度)を認める。診断は,E,L,K,血管炎による症状と組織所見を組み合わせて行う。1998年に厚生省特定疾患系統的脈管障害調査研究班より提唱された診断基準を用いることが多い1)。その際,感染症,悪性腫瘍,その他の膠原病など十分な鑑別が必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療は米国および欧州リウマチ学会,わが国の「血管炎症候群の診療ガイドライン」に準ずる1)~3)。疾患活動性と重症度に応じ,治療選択を行い,寛解導入療法にて6カ月で寛解をめざし,その後維持療法にて寛解を維持する1)~3)

    【寛解導入療法】

    標準治療は,グルココルチコイド(glucocorticoid:GC)と免疫抑制薬の併用である。活動性で重要臓器障害を有する場合,ステロイドパルス療法を含めたステロイド大量療法および免疫抑制薬であるシクロホスファミド間欠的点滴療法(intravenous cyclophosphamide:IVCY)あるいはリツキシマブ(rituximab:RTX)を用いる。IVCYとRTXの効果はほぼ同等であるため,心機能,腎機能など背景を考慮し,選択する。IVCYで効果が乏しい場合はRTX,RTXで効果が乏しい場合はIVCYに変更する。急速進行性糸球体腎炎による血清Cr 5.7mg/dL以上あるいは重症の肺胞出血の場合は,血漿交換の併用を考慮する。

    限局型や早期全身型の場合,中~高用量GCに加えて,メトトレキサート(methotrexate:MTX)の内服を併用する。MTXが何らかの理由で投与できない場合は,アザチオプリン(azathioprine:AZA)あるいはミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil:MMF)の内服とする。

    【寛解維持療法】

    GCの維持量の内服とRTX半年ごとの点滴投与あるいはMTX,AZA,MMFいずれかの内服を継続する。2年後寛解が維持されている場合は,RTX中止や内服の免疫抑制薬の減量を考慮する。再燃時は,その程度により,GCの用量調整と免疫抑制薬の変更を行う。

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