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高アンモニア血症[私の治療]

No.5141 (2022年11月05日発行) P.46

井手健太郎 (国立成育医療研究センター集中治療科医長)

登録日: 2022-11-03

最終更新日: 2022-11-01

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  • 血清アンモニア(NH3)値が,新生児で>200μg/dL,乳児期以降で>100μg/dLの場合には先天性代謝異常症を念頭に治療を開始する。高アンモニア血症は非特異的な症状(活気不良,嘔吐,意識障害,痙攣など)を呈するため,NH3を測定しないと気づくことはできない。

    ▶診断のポイント

    高アンモニア血症の鑑別診断としては,先天性代謝異常症(尿素サイクル異常症,有機酸代謝異常症,シトルリン血症など)以外に,肝障害,門脈体循環シャント,痙攣等の筋活動増加などがある。先天性代謝異常症の診断には,血中アミノ酸や尿中有機酸などが有用であるが,早期に代謝専門医に相談することが望ましい。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    血清NH3値が,新生児で>200μg/dL,乳児期以降で>100μg/dLの場合には先天性代謝異常症を念頭に治療を開始する。治療を開始しつつ,NH3の再検査を実施する(急激な上昇があれば,緊急での血液浄化が必要である。NH3は採血手技や検体の取り扱いの影響で偽性上昇が少なくない)。

    治療は,まず救急のABCの安定化を確認し,絶食にして蛋白負荷を避ける。十分量の輸液(尿中へのNH3排泄を促す)と糖(60~100kcal/kg/日,蛋白異化亢進を防ぐ)を投与する。一手目の薬物療法を開始しつつ,原疾患の検索も進める。NH3のチェックのタイミングは,>300μg/dLでは30分ごと,200~300μg/dLでは60分ごと,100~200μg/dLでは数時間ごとを目安とする。

    当施設での血液浄化の適応は,尿素サイクル異常症などの先天性代謝異常症を疑う際で,薬物療法を行っているにもかかわらずNH3が200μg/dL以下とならず上昇傾向がある場合,またはNH3が300μg/dL以上から低下しない場合に,浄化を開始している。肝障害と凝固障害が主体となる急性肝不全に対しては,NH3<100~150μg/dLを管理目標として,血液浄化を開始する。

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