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特集:肺炎治療における紹介前のポイント&アドバイス

No.5137 (2022年10月08日発行) P.18

菊池教大 (国立病院機構霞ヶ浦医療センター統括診療部長)

登録日: 2022-10-07

最終更新日: 2022-10-05

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1999年筑波大学医学専門学群卒業,2010年同大大学院卒業,筑波大学附属病院,筑波メディカルセンター,水戸医療センターを経て,2011年5月より霞ヶ浦医療センター呼吸器内科へ赴任。現在に至る。

1 COVID-19下での肺炎診療
COVID-19流行により肺炎診療は激変した。診察の際には,個人防護服の着用が必要になり,呼吸器内科医の負担が大きくなった。入院においてもCOVID-19のPCR検査が最優先され,従来の喀痰培養や画像検査などは優先順位が下がった。このような状況でCOVID-19以外の肺炎患者の紹介が以前より難しくなったように思われる。本特集では,肺炎の診断や治療,そして紹介するタイミングなどについて,紹介したいと思う。

2 紹介の前に─肺炎の診断
肺炎治療において重要なことは,迅速な診断および重症度の評価と言える。
以下のバイタルサインを含めた異常が重要である。
①体温38℃以上
②脈拍100/分以上
③呼吸回数20回/分以上
④SpO2<95%
⑤聴診の異常
また,重症度判定にはA-DROPなどを利用する。

3 知っておきたい肺炎の疫学─市中肺炎の起因菌
起因菌により治療法が異なることから,①細菌性肺炎,②非定型肺炎,③レジオネラ肺炎,④COVID-19肺炎,と分けて治療法を考える。①②の鑑別が難しい時には,両者に有効な薬剤選択が必要であるが,安易なニューキノロン系抗菌薬の使用は控えるべきである。

4 検査,胸部画像─紹介前にどこまで検査が必要か
肺炎の軽症例では,採血およびX線は必須ではない。一方で,中等度以上または併存症が多い高齢者では,肝腎機能異常や心不全合併の評価のため,採血を行う。また入院が必要な際には,喀痰培養,塗抹検査なども行っている。胸部画像撮影も行うが,宿主の状態も多様であり,画像のみから起因菌を同定することは難しい。

5 治療─肺炎治療を簡単に考えない
細菌性肺炎ではペニシリン系抗菌薬を投与し,非定型肺炎ではマクロライド系抗菌薬を投与する。多くの場合,治療に難渋することはない。稀に両者の鑑別困難,進行が速い場合,重症化リスクが高い場合はニューキノロン系抗菌薬やカルバペネム系抗菌薬を使用する。しかし,安易な使用は耐性菌を生み出し抗酸菌の増悪をまねくことがあるので十分な注意が必要である。

6 肺炎治療のゴール
誤嚥性肺炎など高齢者の多くは,肺炎を繰り返し,衰弱していく。なるべく食事を継続し,早期からのリハビリ介入を行い,元のADLまで回復させることも重要である。もちろん発症予防や重症化を防ぐために各種ワクチンの接種が推奨される。

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