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絨毛性腫瘍[私の治療]

No.5133 (2022年09月10日発行) P.46

井箟一彦 (和歌山県立医科大学産科婦人科学教室教授)

登録日: 2022-09-08

最終更新日: 2022-09-06

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  • 絨毛性腫瘍(gestational trophoblastic neoplasia:GTN)は胎盤絨毛の栄養膜細胞(トロホブラスト)の異常増殖・腫瘍性変化をきたす疾患であり,胞状奇胎後に発生する侵入奇胎と,悪性腫瘍である絨毛癌,胎盤部トロホブラスト腫瘍(PSTT),類上皮性トロホブラスト腫瘍(ETT)に大別される。全胞状奇胎の10~20%,部分胞状奇胎の0.5~2.0%に侵入奇胎が続発する。一方,絨毛癌やPSTT,ETTはあらゆる妊娠に続発しうる。

    ▶診断のポイント

    胞状奇胎後,血中hCG値の下降が不良の場合は,経腟超音波検査を施行し,子宮筋層内に血流豊富な腫瘤があれば侵入奇胎を疑う。骨盤MRIも有用である。同時に肺転移の検索のため胸部X線,胸部CTを施行する。侵入奇胎を疑うが画像にて病変を認めない場合は,奇胎後hCG存続症と診断する。絨毛癌も画像検査にて子宮内の血流豊富な腫瘤としてとらえられる。絨毛癌は肺,脳,肝臓に転移を起こしやすいため,CTによる転移の検索が必須である。

    一般に侵入奇胎と絨毛癌は化学療法を先行し,病理所見が得られないことが多いため,スコアリングによる鑑別診断を行う。絨毛癌診断スコア1)2)で4点以下を臨床的侵入奇胎,5点以上を臨床的絨毛癌と診断する。FIGO2000分類1)2)では,6点以下をlow risk GTN,7点以上をhigh risk GTNに分類する。PSTTとETTは中間型トロホブラストから発生する稀なGTNであり,診断には病巣の病理診断が必要であり,スコアリングは適用されない。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    侵入奇胎に対しては単剤化学療法が推奨されるが2),有害事象も少なく,外来で投与しやすいメトトレキサート(MTX)単剤療法を第一選択とする。MTXに抵抗性を示したり,MTXの有害事象が強い場合は,アクチノマイシンD単剤療法に変更する。この2剤で侵入奇胎のほとんどは寛解するが,さらに抵抗性のある症例にはエトポシド単剤療法あるいは絨毛癌に用いる多剤併用療法を行う。

    一方,絨毛癌に対しては初回より多剤併用療法が必須であり,MEA療法またはEMA/CO療法が第一選択として推奨される2)。初回治療抵抗性の症例(約20%)に対しては,EP/EMA療法2),さらに抵抗性ならばTP/TE療法2)を選択する。化学療法抵抗性の病変に対しては,外科的切除や脳転移に対する定位放射線照射を行うこともある。

    血中hCGが正常範囲内に下降後,侵入奇胎では1~3コース,絨毛癌では3~4コースの追加化学療法は必須である。

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