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わが国における外傷診療システムの現状および今後の課題と展望 【今後は幅広い外傷患者の受け入れが可能なシステムを病院として整備すべき】

No.4823 (2016年10月01日発行) P.62

林 靖之 (大阪府済生会千里病院千里救命救急センターセンター長)

木村昭夫 (国立国際医療研究センター病院救命救急センター長)

登録日: 2016-10-04

最終更新日: 2016-10-11

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  • 外傷診療は,緊急度の評価や治療優先順位の決定など,それなりの知識とスキルを必要とします。しかし,交通法規の整備や車両安全システムの向上などにより,重症外傷患者数は減少していると考えられ,そういった環境下で外傷診療スキルを維持するのは多大な努力を要します。日本外傷学会代表理事として外傷診療システムの向上に努めておられる国立国際医療研究センター病院・木村昭夫先生に,わが国の外傷診療システムの現状,課題そして将来展望についてご教示をお願いします。

    【質問者】

    林 靖之 大阪府済生会千里病院千里救命救急センター センター長


    【回答】

    わが国では,病院前の選別で3次と判断された傷病者のみに対応する救命救急センターが外傷診療の主たる担い手となっており,重症外傷が減少しつつある社会状況においては十分な患者数が確保できなくなっています。一方,諸外国の外傷センターでは,重症患者のみならず様々な重症度の外傷患者を診療している場合が多く,過多なほどpatient volumeは維持されている施設が多くみられます。また,穿通性外傷が多く一般外科医を中心に外傷診療が進められている北米・南米大陸とは異なり,非穿通性外傷が圧倒的多数を占める欧州やアジア諸国においては,外傷センターの中心的役割は,最も頻度が高い整形外科的外傷に対応できる外傷外科医が担っています。

    日本では,その歴史的経緯から救急医と外科医との両方の資格を備えている医師が中心的な役割を担っていることが多いものの,手術などで彼らが活躍する場面は年々減少傾向にあります。
    以上から,こうした変化への対応を独善的に考察すると,今後,わが国における外傷診療の場は,救命救急センターが取り扱う3次救急患者のみならず,幅広い外傷患者の受け入れが可能なシステムを病院として整備していくべきという考えに到達します。

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