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下痢・脱水[私の治療]

No.5123 (2022年07月02日発行) P.38

栗原智宏 (国立病院機構東京医療センター救命救急センター救命センター長)

登録日: 2022-06-30

最終更新日: 2022-06-29

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  • 急性下痢症では感染症が原因であることが多いが,その多くは自然の経過で治癒し,特別な検査や抗菌薬投与を必要としない。感染症以外にも下痢を引き起こす原因は多く存在し,問診による症状や身体所見,簡便な検査所見から,追加検査や積極的な治療介入が必要か判断する。小児や高齢者では脱水に陥りやすく,必要があれば速やかに細胞外液の補充を行う。全身状態が不良な場合には抗菌薬投与を考慮するが,健康な成人においては原則不要であることを念頭に置き,使用の是非を検討する。

    ▶病歴聴取のポイント

    日に1回だけの排便であっても,軟便を「下痢」と訴える患者もいる。定義としては1日3回以上の軟便・水様便であり,実際に下痢があるかを確認する。血液の混入がないか,軟便か水様便か,便の性状を確認する。

    発症前に摂取した飲食物,摂取してから症状出現までの時間経過,集団発生の有無を確認する。また,内服薬を聴取し,薬剤性の下痢を考慮する。抗菌薬による下痢や,特に高齢者では下剤が漫然と使用されているケースもある。海外渡航歴や症状継続期間を聴取し,1カ月以上持続する慢性下痢症の場合は非感染性の原因を疑う。随伴症状として,発熱,腹痛,嘔気・嘔吐の有無を確認し,その症状の経過や性状を聴取する。また,食事や水分が摂取できているかも,その後の治療方針を決める要因となる。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    血圧低下や頻脈,頻呼吸や発熱など,脱水や敗血症の可能性を考慮してバイタルサインを確認する。また,脱水所見(口腔粘膜の乾燥やツルゴール反応の低下など)や腹部所見を中心に診察を行い,血便や粘血便の訴えがあれば直腸診を行う。

    ▶緊急時の処置

    異常なバイタルサインを伴うような重症の脱水では,速やかに静脈路を確保し細胞外液(生理食塩水や乳酸・酢酸リンゲル液)での輸液を開始する。敗血症や大量出血を疑う場合には,それらに準じた検査・治療を開始する。

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