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小児の新型コロナウイルス排泄期間

No.5122 (2022年06月25日発行) P.54

齋藤昭彦 (新潟大学大学院医歯学総合研究科 小児科学分野教授)

登録日: 2022-06-24

最終更新日: 2022-06-21

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成人では特に免疫不全等がなくても,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患後,長期にわたってウイルス排泄が持続する症例(PCR検査にて陽性を呈する症例)があるようですが,小児でも同様の症例はあるのでしょうか?
また,保育園児などは頻繁に感冒に罹患しますが,一度,COVID-19に罹患し,10日間の隔離・療養を終えて登園を再開していた児が,しばらく経って(2~4週間後),再度,発熱等の症状を呈して医療機関を受診し,PCR検査で陽性となった場合,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への再感染か,あるいは感染性のないウイルスの持続排泄かを,臨床的にどのように区別したらよいでしょうか。
新潟大学・齋藤昭彦先生にご回答をお願いいたします。(群馬県 M)


【回答】

 【小児のウイルス排泄期間は成人よりも長い。また,無症候でも,長期にわたる陽性反応例もある】

COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2は,感染後,高率で,かつ長期にわたり,糞便中に排出されることが,パンデミック初期から報告されていました1)。小児においては,その排出期間は成人よりも長く,糞便中のウイルス排泄が70日以上も続いた2),また,無症候の小児でも54日間陽性が続いた3),という報告もあります。

次に,COVID-19罹患後の小児が一定期間を経て,再度発熱などの症状を呈し,PCR検査でSARS-CoV-2陽性となった場合の解釈ですが,一般的に感染直後は,SARS-CoV-2に対する免疫があり,再感染の可能性は低いので4),この事例では,過去の感染の持続排泄をみている可能性が高いと考えます。

なお,現在流行中のオミクロン株は,再感染の可能性が高く,注意が必要です5)。また,通常,患者の検体は鼻咽頭検体を用いますが,鼻咽頭検体でも感染後,陰性になるまでに2~3週間の時間を要したことが報告されています3)

ご質問のような場合には,その地域における他のウイルス感染症の流行状況,他のウイルス感染症を示唆する病歴や身体所見,家族内や保育園でのシックコンタクトの有無などを総合的に評価して,他のウイルス感染症の可能性がないかを念頭に,鑑別を進める必要があります。

【文献】

1)Wu Y, et al:Lancet Gastroenterol Hepatol. 2020;5(5):434-5.

2)Hua CZ, et al:J Med Virol. 2020;92(11):2804-12.

3)Xie J, et al:Pediatr Infect Dis J. 2020;39(10): e315-7.

4)Chen Q, et al:Emerg Microbes Infect. 2022;11 (1):793-803.

5)Pulliam JRC, et al:Science. 2022;376(6593): eabn4947.

【回答者】

齋藤昭彦 新潟大学大学院医歯学総合研究科 小児科学分野教授

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