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【識者の眼】「なぜリフィル処方なのか?」草場鉄周

No.5110 (2022年04月02日発行) P.60

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2022-03-24

最終更新日: 2022-03-24

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2022年度診療報酬改定の目玉でもあるリフィル処方の全体像が見えてきた。症状が安定している患者について、同一処方箋を上限3回使用できるわけだが、あくまでもリフィルを許可するかは医師の裁量であり、リフィル処方が妥当かどうかの途中評価は調剤薬局において薬剤師のチェックが入る仕組みである。患者にとっては状態が安定しているにもかかわらず投薬を主目的に受診する機会を減らすことができ、時間的あるいは経済的な負担が軽減されるわけである。

ただ、現場の感覚からはこうした患者については既に長期処方で対応することが可能であり、なぜリフィル処方という枠組みを導入しなければいけないのかが理解しづらい。10年前であればクリニックでも30日以内の処方が一般的であったが、大病院を中心に60日、90日の処方も珍しくなくなった現在では、時間軸を元に戻すような感覚もある。あえてメリットを考えると、長期処方の途中で副作用あるいは服薬コンプライアンスに問題が生じた際に、リフィル処方であれば薬剤師の評価が加わるという点であろうか。ただ、既に長期処方されている患者に短期処方でリフィルにする仕組みに戻すのであれば、患者にとっては薬局に行く機会が増え、かえって負担は増えるだろう。

ここまで考えると、やはり諸外国に比べて短い受診間隔で再診を繰り返すことが前提となっている診療所医療の収益構造の問題が大きい。リフィル処方で1カ月間隔の受診が3カ月間隔になると、現在の出来高払いでは1人あたりの患者から得られる年間収入は約1/3に減少する。この構造がある限り、診療所でリフィル処方することは非常に厳しいのが現実である。

予防医療や健康相談、あるいはちょっとした健康問題に気軽に対応するプライマリ・ケアでは、やはり出来高払いではなく登録制による包括払いがなじむ。それであればリフィル処方も長期処方も経営に影響しないし、患者の健康リスクに応じて受診間隔は相当柔軟に設定しても問題ない。オンライン診療も組み込めばアクセスもさらに改善するであろう。そろそろ、従来の診療体制の枠組みを見直すべき時期が来ているのではないだろうか?

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]

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