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【識者の眼】「めざせ、COVID-19流行のない社会:The society “With COVID-19” or the society “Without COVID-19”?」西條政幸

No.5110 (2022年04月02日発行) P.65

西條政幸 (札幌市健康福祉局・保健所医療政策担当部長、国立感染症研究所名誉所員)

登録日: 2022-03-08

最終更新日: 2022-03-07

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私は2021年4月に国立感染症研究所(感染研)から札幌市健康福祉局・保健所に異動した。職場で会う人ほとんどの方は、私にとっては初めて会う人ばかりであった。今の業務を担当するようになり1年が経過した。マスクを外した時の同僚の顔を見たことがない。マスクを外したお顔を見たことのない方が、マスクを外した時のお顔を偶然見ると、想像していた人相と異なることにいつも驚いている。当然相手も私について同じように思っているはずだ。他の人にとっては、マスクをつけている私とマスクをつけていない私は別人なのだ。 現在の社会は、マスクを着けている他者と着けていない他者のどちらが真の存在なのかが曖昧な社会である。

私はCOVID-19が、たとえばRSウイルスやライノウイルスなどが原因となる、いわゆるヒト由来呼吸器感染症になることはないと考えている。SARS-CoV-2武漢株に始まり、α株、δ株を経て、現在は日本ではオミクロン株によるCOVID-19流行のまっただ中にある。SARS-CoV-2オミクロン株の引き起こす病態は比較的軽いとされているが、一人ひとりの病状を確認していると、COVID-19ワクチン接種者であっても高熱、激しい咽頭痛、食餌摂取量の低下で多くの患者が苦しんでいる。また、ワクチン未接種の患者に多いのだが、発熱が長く続き、徐々に呼吸不全に至る、COVID-19として典型的な経過を示す患者も比較的多い。オミクロン株は伝播性の高さに加えてα株やδ株の特徴を兼ね備えている。

このような感染症とともに生活しなければならない社会から脱却させるべきである。私はCOVID-19ワクチン接種政策を適切なものにすることで、COVID-19を根絶させることが可能だと考えている。それには流行株に適したワクチンを適宜、生産できるようにすること、ワクチン接種率を高めること、2回(または3回)のワクチン接種を済ませた人は、数年ごとに定期的にワクチン接種を受けるようにすること、COVID-19流行を適切に把握するための検査に基づくサーベイランスを維持すること、これらの対策を実施することによりCOVID-19に強い社会にできるはずだ。日本でも、また、他の国でも根絶をめざした政策を協同して、かつ、長期的になされるべきである。

私はCOVID-19が根絶されることは可能だと信じている。時間がかかろうとも再びCOVID-19から解放された社会(The society “Without COVID-19”)で生活したいものだ。

西條政幸(札幌市健康福祉局・保健所医療政策担当部長、国立感染症研究所名誉所員)[新型コロナウイルス感染症]

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