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【識者の眼】「病院総合診療科の外来診療」藤島清太郎

No.5105 (2022年02月26日発行) P.65

藤島清太郎 (慶應義塾大学医学部総合診療教育センター・センター長)

登録日: 2022-02-04

最終更新日: 2022-02-03

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総合診療科の初診外来には、様々な急性・慢性の症状・徴候を呈する患者さんが紹介されてくる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック以前に行った分析では、不明熱、易疲労感、体重減少、食思不振、頭部・体幹・四肢の痛み、四肢のむくみ・腫れ、皮疹、めまい、動悸、息切れ、咳嗽など多岐にわたっていた。諸検査を行っても明らかな身体的異常が見当たらない場合もあるが、様々な疾患が隠れていることも少なくない。参考までに、当科でこれまでに診療した疾患の一部を以下に示す。我々の役割は、緊急性の有無を判断し、効率的な検査計画により速やかに診断の目安を付けることである。その結果、緊急性が高い・専門的診療が必要と判断した場合は、速やかに適切な診療科に繋ぐが、自身で診療を継続することも多々ある。

当科で診療した疾患例
感染症:細菌性肺炎、細菌性心内膜炎、腹腔内感染症、急性腎盂腎炎、感染性動脈瘤、伝染性単核症、帯状疱疹、百日咳
自己免疫疾患:リウマチ性多発筋痛症、巨細胞性動脈炎、関節リウマチ、リウマチ熱、多発性筋炎、結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、クローン病、菊池病
アレルギー疾患:各種アレルギー、食物依存性運動誘発性アナフィラキシー、好酸球性血管性浮腫、好酸球性肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
悪性疾患:悪性リンパ腫、膵臓癌、肺癌、上大静脈症候群、腎細胞癌
その他:急性期脳梗塞、水頭症、虚血性心疾患、うっ血性心不全、急性大動脈解離、発作性不整脈、上下肢の深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症、慢性閉塞性肺疾患、消化管出血、横紋筋融解症、家族性地中海熱、バセドウ病、正常妊娠

一方で、再診外来では多くの多疾患併存患者を診療している。多くは高齢者であり、当院の専門診療科に通院を要するため、他の併存疾患をまとめて当科で診る場合も多い。ここでの我々の役割は、ガイドラインなどの標準診療指針をベースに、個々の患者の状況を勘案した治療を行い、介護の必要性を適時判断し、通院困難になる前に地域医療へのスムーズな橋渡しを行うことであろう。

このように、初診と再診で担う役割が異なるが、総合診療科は診療領域が広いことが特徴であり、総合診療医には何れにも対応できる能力が求められている。

藤島清太郎(慶應義塾大学医学部総合診療教育センター・センター長)[総合診療科]

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