株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【一週一話】術前体液管理に,もはや点滴は不要である~術前経口補水療法でみんなをHappyに~

No.4758 (2015年07月04日発行) P.55

谷口英喜 (神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-15

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • わが国では,術前患者の体液管理は輸液療法(点滴)が主体で,長い絶飲食期間がとられていた。2005年の調査では,成人では術前の絶飲水期間は平均6~9時間,絶食期間はさらに長く平均12~13時間と報告された。

    患者は,絶飲食の指示に従い,口渇・空腹感を我慢し,その結果,術前の不安・焦燥感も増強した。医療者は,脱水症の予防を目的に輸液療法を行い,医師・看護業務の負担,インシデントの機会も増加した。すべては,麻酔・手術の安全な実施のために当然のことと教えられた結果である。

    今から24年前,筆者が麻酔科医になりたての頃,患者はストレッチャーに乗せられ点滴を受けながら手術室に入室していた。その後,点滴をしながら患者が歩行して入室してくる歩行入室が主流になった。しかし,点滴はしていても入室してくる患者の多くが,「お腹がすいた,のどがカラカラ」と訴えていた。すべて,先輩から教わった通りの当たり前のことと感じていた。わが国には,術前絶飲食のガイドラインも存在しなかった。2007年,筆者は,ひとつのresearch question(RQ)に対し,臨床研究を計画した。「術前の点滴を止め,その代わりに経口補水療法を実施すれば術前の体液管理が安全にできるのではないか」というRQである。そしてRQを立証して,わが国にもガイドラインをつくろうと目論んだ。

    残り785文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top