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【識者の眼】「最新の子宮頸がん検診ガイドラインで変わったこと」柴田綾子

No.5069 (2021年06月19日発行) P.67

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科副医長)

登録日: 2021-04-30

最終更新日: 2021-04-30

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新型コロナウイルスの影響で、がん検診の受診率は低下しており、がん発見の遅れが論文報告されています(Kaufman HW,et al:JAMA Netw Open.2020;3(8):e2017267.)。日本でも2020年のがん検診受診率は前年比30.5%の減少で、2100のがんが未発見になっていると推定されます1)。今回は2020年に更新された子宮頸がん検診ガイドライン2)について解説します。

1. HPV検査単独法が選択肢に:HPV(ヒトパピローマウイルス)検査単独法が、子宮頸がん検診として推奨グレードAになりました。ただし検査の感度が高いため、偽陽性が増加するリスクに注意が必要です。対象は30〜60歳で検査は5年毎が推奨です。

2. 細胞診に対象年齢が追加された:これまで子宮頸がん検診に対象年齢はありませんでしたが、検診対象年齢として20〜69歳が明示されました。子宮頸部細胞診の検査間隔は2年毎で変化ありません。プレパラート標本に比べて、液状検体法(Liguid Based Cyzology:LBC)の方が、不適正検体が少なくなります。

3. 自己採取検査について:「検査検体は医師採取を原則とする」と明示されました。特に細胞診では、自己採取の場合に検査感度が低くなることが懸念されています。一方でHPV検査は自己採取検査でも十分に感度が高く、コロナ禍ではその有用性も議論されています。英国では子宮頸がん検診の受診が遅延している女性にHPV検査の自己採取キットを郵送し、子宮頸がんの早期発見を行う取り組みが始まりました。

日本ではHPVワクチン普及率が1%以下であり、子宮頸がんの増加が予測されています。コロナ禍での子宮頸がん検診およびHPVワクチンの普及に向けて対策が必要です。

【文献】

1) 日本対がん協会:2020年の受診者30%減、約2100のがん未発見の可能性(2021年3月24日)
https://www.jcancer.jp/news/11952

2) 国立研究開発法人国立がん研究センター:有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン更新版公開(2020年7月29日)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2020/0729/index.html

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柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科副医長)[がんの早期発見]

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