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痙攣[私の治療]

No.5062 (2021年05月01日発行) P.30

中森知毅 (横浜労災病院救命救急センター救急災害医療部部長)

登録日: 2021-04-29

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  • 痙攣は,全身または身体の一部の筋群の不随意な発作性の収縮で,脳,脊髄,末梢神経,筋肉のいずれかの障害や,精神的な要因から生じる。患者が訴える「けいれん」,あるいは医療者が遭遇した痙攣が,これらのいずれに該当するかを考える必要がある1)。一方,てんかんは慢性の脳の疾患で,大脳の神経細胞が過剰に興奮するために,脳の発作性の症状が反復性に生じるものである。てんかんの症状は痙攣発作であることが多いが,痙攣を伴わないものも含まれる2)
    即時治療が必要な痙攣かどうかを見きわめ,緊急を要する場合には可及的速やかに対応する必要がある。

    ▶救急時の処置

    【痙攣発作が既に止まっている場合】

    まず,痙攣発作を起こすような明らかな誘因(脳炎,外傷,脳血管障害,血糖異常や電解質異常等の代謝障害など)がないことを確認する必要がある。これらの誘因がある場合には,その対応が優先される。
    特にこれらの誘因がなく,初回の発作である場合,神経学的異常,脳波異常,脳画像病変ないしはてんかんの家族歴がない場合には,薬物治療は開始しない。ただし,患者の社会的状況から必要性があると判断される場合や,希望がある場合,あるいは高齢者である場合には治療開始を考慮する。2回目の発作である場合には,薬物治療の開始が推奨される(以下,薬物の記載量は成人量)。

    〈抗てんかん薬の選択:全般てんかんの場合〉

    一手目 :デパケン®200mg錠(バルプロ酸)1回1錠1日3回

    二手目 :〈一手目に追加〉イーケプラ®500mg錠(レベチラセタム)1回1錠1日2回

    【痙攣発作が止まっていない場合】

    痙攣発作は通常1~2分で停止することが多いが,5分以上持続する場合にはてんかん重積状態と判断し,治療を開始する必要がある。30分以上持続すると長期的な後遺障害を残す可能性がある。以下に,てんかん重積発作の治療について述べる。
    ①気道を確保し,酸素投与を開始,点滴路を確保。血糖値を確認。
    ②心電図モニター,SpO2モニターを装着。
    ③血糖値が60mg/dL以下の場合,塩酸チアミン100mg,50%ブドウ糖液50mL(静注)。
    ④抗てんかん薬の投与。

    一手目 :セルシン®注(ジアゼパム)1回5~10mg(静注) 5mgもしくは10mgずつの静注を3~5分ごとに行い,計20 mgまで投与可

    二手目 :〈一手目に追加〉ホストイン®注(ホスフェニトイン)1回22.5mg/kgを150mg/分以下の速度で点滴静注

    三手目 :〈二手目に追加〉イーケプラ®注(レベチラセタム)1回1000~3000mgを2~5mg/kg/分の速度で点滴静注

    二手目のホストイン®の代わりに,ノーベルバール®注(フェノバルビタール)1回15~20mg/kgを100mg/分以下で点滴静注してもよい。発作停止については,ホストイン®よりもノーベルバール®のほうが効果を認めるが,呼吸抑制の頻度は上昇する。

    四手目 :〈三手目に追加〉ドルミカム®注(ミダゾラム)0.05~0.4mg/kg/時で持続静注

    注意:てんかん重積発作そのものから,あるいは上記治療薬によって,舌根沈下や呼吸停止を生じる可能性が高いので,気道確保,場合によっては気管挿管の必要性に注意が必要である。

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