近年のコンピューター・IT技術の進歩が生み出した肝3Dシミュレーション・肝切除ナビゲーションは,保険収載されるほどまでに認められるようになりました。しかし,その必要性や意義は,肝切除術の安全性・確実性が既に十分高められた今,不明確なままです。外科医,さらには手術を受ける患者にとって,手術ナビゲーションはどのように進化していくべきでしょうか。
兵庫医科大学・波多野悦朗先生のご教示をお願いします。
【質問者】
高本健史 国立がん研究センター中央病院肝胆膵外科
【リアルタイム手術ナビゲーションシステムにより外科医の負担が軽減され,より安全で確実な手術が患者に提供できる】
ナビゲーションと言えば,カーナビゲーションシステム(以下,カーナビ)です。30年以上の歴史を持つカーナビの進化から今後の手術ナビゲーションの進化を予測しましょう。
今では当たり前に使われているカーナビですが,カーナビがなかった頃のドライブは,地図帳による予習(手術で言えばシミュレーション)と道路標識(脈管などのメルクマーク)が頼りでした。地図にはない,道路標識もない細い路地や抜け道に入ろうものなら迷子となり,イライラして,とても不安なドライブになりました。カーナビは,センサーによって自車の移動方向と距離,全地球測位システム(global positioning system:GPS)によって自車位置を知ることにより飛躍的に発展しました。GPS測位の精度が上がり,さらに通信機能を搭載することにより最新の道路情報を反映し(リアルタイム),最適なルートを案内できるようになり,普及しました。もはや何らかのナビゲーションシステムなしで知らない土地をドライブする人はいないでしょう。プロのドライバーであるタクシーの運転手でさえ複数のナビゲーションシステムを使用しています。
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