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【識者の眼】「敗血症の予後に貢献できる感染症検査の進歩」栁原克紀

No.5041 (2020年12月05日発行) P.60

栁原克紀 (長崎大学病院検査部教授・部長)

登録日: 2020-11-27

最終更新日: 2020-11-27

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敗血症は「臓器障害を伴う重症感染症」と定義され、迅速かつ正確な原因菌同定は患者管理や治療方針を決定する際に重要な情報である。しかしながら、原因菌同定までに、2〜3日を要するため、より早い検査法が求められていた。遺伝子検査は迅速かつ正確な検査法として期待されている。

遺伝子検査は、従来から行われている分離培養法ならびに生化学的同定法と比較して、より早く微生物を検出することができる。しかしながら、一定の知識や手技などの習得が必要な上に、特殊な機器を要する点やコストの面などから、臨床現場での活用場面は限られてきた。近年、次々に新しい技術を用いた機器や工夫を凝らした手法が開発され、応用範囲が拡がってきている。

1種類の病原体(シングルターゲット)を対象にしたものは、安価で簡便であり、ベットサイドでも使用できる。多項目同時遺伝子検出(マルチターゲット)は、多種病原体と薬剤耐性遺伝子等の同時検出が可能であり、感染症原因菌の網羅的な検出に加え、耐性遺伝子や病原遺伝子の検出に大きな威力を発揮する。遺伝子の増幅法にしても、新技術が投入され、迅速、簡易、正確な検査法として使用されている。

全自動核酸抽出増幅検査システムの導入も、遺伝子検査の浸透に影響を与えている。煩雑となりやすい遺伝子抽出の操作を含めて、増幅から検出まで1台で行える装置も登場してきた。サンプルを機器に装着後、全自動でこれらの過程を行うため、時間の短縮に加え、コンタミネーションのリスクが回避できる。また、操作のプロセスが少なく、施行者の技術にも左右されにくい。このような機器はマンパワーをさほど必要としないため、検査部門での通常業務に組み込むことが容易である。

感染症にかかわる検査は進化しており、ますます感染症診療や感染対策に貢献することが期待される。新規検査機器は精度が高く、かつ迅速に結果が得られるが、グラム染色や生化学的同定検査、薬剤感受性試験などの従来法にとって代わるものではない。うまく組み合わせ、有用性と限界を正しく把握し、使いこなしていく必要がある。加えて、新しい技術や知識の教育、人材育成も大切である。

栁原克紀(長崎大学病院検査部教授・部長)[敗血症の最新トピックス⑩]

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