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【識者の眼】「ソニーの車とトヨタの街」神野正博

No.5026 (2020年08月22日発行) P.57

神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)

登録日: 2020-07-31

最終更新日: 2020-07-31

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It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is most adaptable to change.

生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである。

これは、「我々は変わらなくてはならない」の趣旨で今なお多くの文章やスピーチで引用されるダーウィンのものとされる名言だ。withコロナという新しい生活様式の模索の時代ではなおさらだ。

それでも「どうして変わらなければいけないのか?」と思う御仁はたくさんいる。その答えは簡単だ。5年前、10年前、20年前の身の回りの世界はどうだったのか? 世界は数々の分岐点を選びながら今の社会を形作ってきた。電気自動車(EV)はいつから我々の周りを走り出したのか? 液晶テレビにデジタル放送は? インターネットは? Wi-Fiは? スマートフォンは?…医療界においても、癌の告知は? 癌は不治の病か? 3D画像は? 血管内手術は? 内視鏡手術は? 免疫チェックポイント阻害剤は? など、誰かがその後に当たり前の価値となる変化を起こしてきたのである。

今年、これまでの固定概念を打ち破る2つの衝撃的な発表があった。まずは、あのソニーである。ソニーといえば電機メーカーとして、これまで多くの音響や映像機器を作り世界を引っ張ってきた。aiboという犬型ロボットの登場にも驚いたが、今度はそのロボット開発チームが手掛けたというEVの開発だ。複雑なエンジンではなく電気モーターで動くEVは電化製品なのかもしれない。なめらかな走行はロボットの関節制御の延長かもしれない。

次に度肝を抜いたのは、トヨタが静岡県裾野市で街を作るということだ。なぜ都市開発? という思いがあったが、確かに既存の街での自動運転車の走行は、道路交通法など従前の法律で規定される。しかし、ゼロから、しかも私有地に建設する街である。道路に、地下に、建物に様々なセンサーなどを埋め込める。さらに、ゼロエミッションも実現可能だ。壮大な社会実験であるとともに素晴らしいショールームとなることだろう。

両社ともに、これまでの電機メーカー、自動車メーカーという業態から新たなカテゴリーの業態を創り出そうとする意気込みを感じる。我々医療機関も、過去の業態をひたすら守り継続していくだけというわけにはいかない。新たなカテゴリーを創り出す意気込みが必要な時だと思えてならない。

神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[新しい生活様式 ]

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