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【識者の眼】「全出生の約6%に上る生殖補助医療の現状」片桐由起子

No.5014 (2020年05月30日発行) P.65

片桐由起子 (東邦大学医学部産科婦人科学講座教授)

登録日: 2020-05-14

最終更新日: 2020-05-14

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体外受精および顕微授精などの生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)は、日本産科婦人科学会の登録施設で実施されており、全国に619施設存在している(日本産科婦人科学会施設検索2020年2月28日)。登録施設は治療内容を学会に報告することになっており、2017年のARTデータ報告(http://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/)によると、5万6617人の児が出生した。同年の日本の国内出生数は94万6065人であったことから、この年のARTによる出生は全出生の5.8%であったことになる。2019年の出生数は86万4000人であったことから、ARTによる出生が出生全体に占める割合はさらに増加していると推察される。

同年のART総数44万8210周期には、採卵当日に体外受精(in vitro fertilization:IVF)あるいは顕微授精(intra-cytoplasmic sperm injection:ICSI)を実施し、その数日後に胚移植(embryo transfer:ET)する①新鮮胚移植(5万5720)周期、②得られた胚のすべてを一度凍結する全胚凍結(19万6931)周期、先だって凍結してあった胚を解凍してETする③凍結胚融解胚移植(19万5559)周期が含まれている。

ARTの妊娠率および出生率は、通常胚移植周期あたりとして算出するが、胚移植25万1279周期(①22.2%、③77.8%)のうち妊娠は7万9194周期(①21.4%、③34.4%)、出生5万4997周期(①19.1% vs. ③24.6%)と、凍結融解胚移植後で成績が良いため、凍結融解胚移植が多く実施されている。出生児あたりでは、①15.1%、③84.9%で、凍結胚由来が約85%を占めている。ART成績は女性の年齢に大きく影響を受けるが、ARTを受けている女性の年齢ピークは40歳である。

片桐由起子(東邦大学医学部産科婦人科学講座教授)[生殖医療

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