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【識者の眼】「理不尽なクレームと叱咤激励のクレーム」畑山 博

No.5005 (2020年03月28日発行) P.57

畑山 博 (医療法人財団足立病院理事長/社会福祉法人あだち福祉会理事長)

登録日: 2020-03-30

最終更新日: 2020-03-25

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医療にクレームは付き物です。思った通りにならない美容外科、安全なはずの分娩での事故、機能回復しない整形外科手術、見えるはずなのにそうならない眼科手術、等々。どれ程事前の説明をしても、結果が全ての世界。納得してもらうことは難しいのが現状です。でも、逆の発想をすると、それは期待をしてもらっていて、その期待には応えることができなかったということであり、ある種の信頼を得ていたと考えることもできます。

世の中には全く信頼が存在しないクレームもたくさんあります。例えば、少子化対策・女性の働き方改革のために、保育園を作る計画が全国で進んでいますが、最大の難問は、地域住民の反対運動、「静かに暮らしたい!」です。余生を静かに暮らしたい高齢の住民にとって、子供たちの声は単なる騒音であり、生活の邪魔でしかないようです。「近くの公園は地域住民のものであり、園児は使わないように!」になると、驚きを通り越して、怒りさえ覚えます。

大みそかに、遠くから聞こえる除夜の鐘は、日本人ならほとんどの人が、「無事に一年終わって、また来年頑張ろう」という思いで聞いていると思っていたら大きな間違い。実は最近、除夜の鐘がうるさいとの苦情で、鐘を突くことを中止したり、昼間に鐘をつく地域も増えてきているようです。葬儀場、し尿処理場、焼却炉、原子力発電所やアメリカ軍基地、等々。必要なのは、わかっているが、自分の周りにない方がいい。

そんな理不尽なクレームに比べると、患者さんからのクレームは、医師や施設への叱咤激励と言えるかもしれません。そう考えると、少しは楽になる?

畑山 博(医療法人財団足立病院理事長/社会福祉法人あだち福祉会理事長)[クレーム]

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