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【識者の眼】「診察室では出会えない患者に医師ができること」川越正平

No.5005 (2020年03月28日発行) P.54

川越正平 (あおぞら診療所院長)

登録日: 2020-03-26

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千葉県東葛北部に位置する松戸市医師会では、医療につながっていない事例に遭遇した地域包括支援センターからの相談を受けて、必要に応じて「地域サポート医」と称する圏域を担当する医師会医師(15圏域に19名配置)が当事者のもとに赴くアウトリーチ(訪問支援)活動に2016年度から取り組んでいる。この活動により、認知症、身体障害、精神疾患、高次脳機能障害、発達障害、知的障害、アルコール等依存症、引きこもりなどの困難を抱えている方が暮らしていること、老老、認認、ダブルケア、8050、生活困窮、虐待などの課題を有する世帯も少なくないという経験を重ねている。

対象者の約1/3を生活保護受給者が占めており、受診中断のみならず、ライフライン停止やゴミ屋敷状態に陥っている実態が浮き彫りになった。セルフネグレクトという概念にとどまらない、困っても“助けを求める力の欠如”した方の存在を痛感させられる。そこで、生活保護担当課と協議の上、市と医師会が協働して、生活保護受給者の健康管理支援に取り組むことになった。ちなみに、人口約50万人である千葉県松戸市において、生活保護受給者は約1万人、そのうち65歳以上は約5000人である。

医療扶助について調査したところ、70歳以上で過去6カ月間請求のない方が324人抽出された。また、過去に介護認定により要介護と判定されたのち認定切れになっている被保護高齢者が264人いることが判明した。該当者の担当職員が、ADL、認知機能、持病、不衛生な環境、介護申請、社会との交流、ライフラインなどをチェックし、リスク分類を行う。高リスクに該当する場合、地域包括支援センターに相談する。受診勧奨が功を奏しない場合、地域サポート医がアウトリーチを行う。このスキームに基づき、2019年の一年間にアウトリーチを計16人に実施し、うち14人(88%)を訪問診療や外来診療、入院など必要な医療に接続することができた。もちろん、まだ氷山の一角に対応した段階である。今後も、適切な医療につながっていない方を見いだし、順次働きかけていく方針である。

生活保護法改正に伴い、2021年1月からすべての市町村において生活保護受給者の健康管理支援が必須事業となる。もちろん、このような問題は生活保護受給者に限らない。医師会が有する医療に関する知見や在宅医療のノウハウを活かし困難事例への対応力を高めることによって、すべての住民にとって暮らしやすいまちづくりの実現に貢献したい。

川越正平(あおぞら診療所院長)[アウトリーチ][助けを求める力の欠如][生活保護受給者の健康管理支援]

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