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加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)[私の治療]

No.4991 (2019年12月21日発行) P.42

松下一仁 (順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学准教授)

堀江重郎 (順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学教授)

登録日: 2019-12-20

最終更新日: 2019-12-18

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  • 中高年男性における,テストステロン(T)値の低下と,それに伴う臨床症状を加齢男性性腺機能低下(late-onset hypogonadism:LOH)症候群1)と呼ぶ。T値の低下に伴い,心理,身体,性機能に関して更年期症状が出現する。また,T値の経時的低下と関連してメタボリックシンドロームや心血管障害,認知症,筋肉・骨代謝異常などのフレイルが発症することも報告されている。性腺機能の加齢変化に生活習慣や併存する疾患もT値に影響する。

    ▶診断のポイント

    LOH症候群の症状および徴候として頻度の高いものは,①性欲の低下と勃起能の質と頻度,とりわけ夜間睡眠時勃起の減退,②疲労感,抑うつ,短気などに伴う気分変調,③ほてりや発汗,④睡眠障害,⑤筋力低下,⑥内臓脂肪の増加,⑦関節や筋肉の痛み,⑧骨減少症と骨粗鬆症に伴う骨塩量の低下,が挙げられる。
    これらの症状で受診した際にはLOH症候群を疑い,血液検査で総Tまたは遊離T値を測定する。海外のガイドラインではT測定は複数回,午前中に行うことが推奨されている2)。しかし,60歳以上では日内変動の幅が少ないため,必ずしも午前の採血にこだわらなくてよい。海外ガイドラインでは,総T 320ng/dL以下をLOHの基準としている。わが国では,遊離T値8.5pg/mLを基準としている1)。低T値の場合,黄体形成ホルモン(LH)・卵胞刺激ホルモン(FSH)とプロラクチン(PRL)を確認する。高PRL血症は低Tの原因となるため,その際には薬剤の多剤服用や下垂体腫瘍を精査する必要がある。ヘモグロビンやPSAはTと連動することが多いので,参考にする。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    LOH症候群はQOL疾患であり,治療の目標は症状の改善である。

    LOH症候群の原因の多くは,過剰なストレス,長時間の労働,定年後の社会活動の低下,超高齢者のサルコペニア,に大別される。治療の第一選択は食事・運動など生活習慣の見直しについての指導である。メタボリックシンドローム,糖尿病など併存症の改善により,LOH関連症状の改善やTの上昇が期待できる。睡眠時無呼吸症候群を併存している場合,まずそれに対する治療を行い,睡眠の改善を図ることによりTが上昇し,症状の改善につながることも多い。性機能障害,特に勃起不全(ED)が主な症状で受診した場合には,PDE5阻害薬の処方を考慮する。

    LOH関連症状があり,さらに低T値である場合,T補充療法(エナルモンデポー®)を開始していく。2~4週間ごとに3カ月投与して効果判定をしていく。併せて生活習慣の改善やストレスマネジメントを提案する。T補充療法の効果がみられない場合には他の原因も考え,心療内科やメンタルクリニックへコンサルテーションする。

    高齢者,LOH関連症状があるが,Tは基準値以上であった場合,また軽症の場合では漢方薬(補中益気湯,柴胡加竜骨牡蠣湯)が効果があることが多い。T値が基準値以上であってもT補充療法が奏効することがある。一方,T補充はネガティブフィードバックにより視床下部-下垂体系を抑制し,内因性のT産生が減少し,無精子症をきたすため,患者が若年者で挙児希望がある場合には,造精機能も改善できるクロミフェンやヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)治療を第一選択とする。

    低T値だが,LOH関連症状がほとんどないという状況では,T補充療法は行う必要はない。しかし海外のデータでは低T値は心血管系疾患や死亡率,フレイルとの関連を示しており,症状の有無にかかわらずT補充が必要という意見もある3)

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