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がん患者遺族の診療で気をつけたいことは「後悔」と「誤解」の可能性:遺族外来の現場から

No.4964 (2019年06月15日発行) P.51

石田真弓 (埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター精神腫瘍科講師)

大西秀樹 (埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター精神腫瘍科教授)

登録日: 2019-06-12

最終更新日: 2019-06-12

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【遺族の訴える「後悔」が,医学的な「誤解」に基づいている可能性に留意する】

がん患者遺族に特徴的な苦悩はあるのだろうか。当院,「遺族外来」受診者の診療録による後方視的調査を実施し,がん患者遺族の苦悩について内容分析を用いて特徴を明らかにした。その結果,遺族の苦悩は「後悔」「怒り」「記憶の想起」「孤独感」「不安感」「絶望感」に大別され,中でも特徴的な苦悩は「後悔」と「記憶の想起」で,いずれもがんの経過と深く関連していた。特に「後悔」は外来受診者の約7割と,最も高頻度に認められた。

後悔の内容は,「気づいてあげられなかった」「しっかり看病できなかった」「看取ることができなかった」など広範囲に及ぶ。がん患者家族は,看病のみならず,その経過で多くの情報に曝露され,あらゆる決定に関わるため「第2の患者」と呼ばれ,その影響は遺族になっても残るのだろう。

診療時の注意すべき点は,遺族の訴える「後悔」が,医学的な「誤解」に基づいている可能性である。「後悔」に注意深く耳を傾けると「モルヒネを使用したから早く亡くなった」「鎮静に同意したことで寿命を縮めた」「看病がうまくできず,精神的におかしくさせた」という訴えも少なくない。いずれも「誤解」に基づく「後悔」である。遺族の死別にまつわる情緒的な訴えの中に医学的な誤解を確認し,随時修正することは,「無意味な後悔」を抱えないためにも非常に重要である。

【参考】

▶ Ishida M, et al:Jpn J Clin Oncol. 2012;42(6): 506-12.

【解説】

石田真弓*1,大西秀樹*2  埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンター精神腫瘍科 *1講師 *2教授

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