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特集:老衰の臨床─診断・ケア,死亡診断書はどうする

No.5218 (2024年04月27日発行) P.18

鈴木 央 (鈴木内科医院院長)

登録日: 2024-04-26

最終更新日: 2024-04-23

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1987年昭和大学医学部卒業。同大学附属病院第2内科,都南総合病院内科部長,鈴木内科医院副院長を経て,2015年より現職。

1 老衰とは?

  • 明確な定義はない。
  • 加齢に伴い,身体機能が自然に低下した状態で,不可逆的と考えられている。
  • 内臓機能,精神機能も低下している状態と考えられる→身体機能の低下,食事量の減少,精神活動の低下(睡眠時間の増加)などが出現する(ほとんどは要介護状態)。

2 フレイルと老衰

  • 加齢による虚弱性が回復困難となった状態を老衰と考える。

3 死亡診断としての老衰―老衰死を考える

  • 老衰死の割合は,世界的にも日本が突出している。
  • 老衰死は「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない,いわゆる自然死の場合のみ記載」。
  • 病理学的には老衰死はないとの考え方もある。
  • 死因の診断は病理学的なものではなく,外表からの観察,病状経過のみでよい。
  • 異状死の判断は臨床経過と外表からの観察のみで行い,検査や病理解剖などは不要である。
  • 老衰という死因は,医師が外表から観察し,異状性の判断を行い,それまでの継続的な臨床経過における膨大な診療情報をもって診断が可能となる。

4 老衰の臨床

  • 継続的な診療下で診断がくだされることが重要である(外来診療+在宅医療)。
  • 可能な範囲で他疾患を除外→慢性臓器不全,肺炎,がん,薬剤による副作用,口腔内の問題などをチェック,検査は本人に負担がない程度にする。
  • 要介護状態であることがほとんど→介護保険利用,ケアマネジャーとの連携必須。
  • 過剰な栄養投与は不要であることが多い→基礎代謝が低下している可能性が高い。
  • 可能であればリハビリテーション→本人の意欲がなければ他動的拘縮予防。

1 老衰とは

明確な定義はない。老衰は,加齢による身体機能の低下をきたした状態と考えられることが多いが,亀山は「老年者の体内において,homeostasisを維持する機構が著しく損なわれた状態」と定義した1)。しかし,「このhomeostasisの崩壊がagingのみによって生じるか否かが大きな問題である」とも指摘している。

つまり,身体機能のみならず,内臓機能,代謝機能の低下も伴い,結果として意識レベルの低下も生じつつある状態であると考えられる。具体的には,身体機能の低下(歩くことができなくなる),食事量の減少,体重の減少,精神活動の低下(眠ることが増える)が主な症状と考えられる。さらに,亀山が指摘するようにhomeostasisの維持が困難な状態であるとすれば,様々な内臓が機能不全の状態となっている可能性が高い。

また,その症状からはフレイルとの関連性も考えられるが,フレイルは栄養や運動介入を行うことで改善する可能性が指摘されている。老衰では,さらに進行し,不可逆的な状態となっている可能性が高い。既に要介護状態となり,さらに進行すれば,死因となりうると考えられる。

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