明確な定義はない。老衰は,加齢による身体機能の低下をきたした状態と考えられることが多いが,亀山は「老年者の体内において,homeostasisを維持する機構が著しく損なわれた状態」と定義した1)。しかし,「このhomeostasisの崩壊がagingのみによって生じるか否かが大きな問題である」とも指摘している。
つまり,身体機能のみならず,内臓機能,代謝機能の低下も伴い,結果として意識レベルの低下も生じつつある状態であると考えられる。具体的には,身体機能の低下(歩くことができなくなる),食事量の減少,体重の減少,精神活動の低下(眠ることが増える)が主な症状と考えられる。さらに,亀山が指摘するようにhomeostasisの維持が困難な状態であるとすれば,様々な内臓が機能不全の状態となっている可能性が高い。
また,その症状からはフレイルとの関連性も考えられるが,フレイルは栄養や運動介入を行うことで改善する可能性が指摘されている。老衰では,さらに進行し,不可逆的な状態となっている可能性が高い。既に要介護状態となり,さらに進行すれば,死因となりうると考えられる。