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骨粗鬆症による骨折は食事からのカルシウム摂取により予防できるか?

No.4957 (2019年04月27日発行) P.61

上西一弘 (女子栄養大学栄養学部実践栄養学科教授)

登録日: 2019-04-24

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最近,海外から「カルシウム摂取では骨量の改善はみられない」と報告されているようです。骨折の原因は主に転倒で,視力低下,平衡感覚障害,筋力の低下が関与しているとされています。骨量は閉経後加齢によって低下しますが,食事でカルシウム摂取を増量したり,薬剤治療を行うことによって,転倒・骨折予防を期待できるのでしょうか。

(富山県 Y)


【回答】

【骨折を直接予防できるというエビデンスは欧米ではないが,元々摂取量が少ない日本人は積極的なカルシウム摂取が必要】

海外のメタアナリシスの結果には,カルシウム摂取量を増やすことだけでは骨折の予防は期待できないという報告が多くみられます1)。しかし,海外,特に欧米のカルシウム摂取量は多く,カルシウム摂取量の少ない日本人にそのまま当てはめることには問題もあります2)

日本人を対象とした研究では,カルシウム摂取量が少ないことは骨折のリスクを上げるという報告があります3)。さらに,多くの骨粗鬆症治療薬は適量のカルシウム,ビタミンD摂取を前提としています4)

したがって,カルシウム摂取量を増やすことだけによって転倒や骨折を直接予防できる,というエビデンスはありませんが,少なくとも650~800 mg/日のカルシウム摂取を目指すことが重要です5)

【文献】

1) Xu L, et al:Br J Nutr. 2004;91(4):625-34.

2) Ohta H, et al:Osteoporos Sarcopenia. 2016;2 (4):208-13.

3) Nakamura K, et al:Br J Nutr. 2009;101(2):285-94.

4) Sunyecz JA, et al:J Womens Health(Larchmt). 2005;14(2):180-92.

5) 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会, 編:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版. ライフサイエンス出版, 2015.

【回答者】

上西一弘 女子栄養大学栄養学部実践栄養学科教授

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