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【他科への手紙】耳鼻咽喉科→内科、臨床現場

No.4780 (2015年12月05日発行) P.51

柘植勇人 (名古屋第一赤十字病院耳鼻咽喉科部長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-01

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  • NHKテレビの番組「ためしてガッテン」にて、「耳鳴りが補聴器で治る……」という内容の放送がありました(2015年3月4日)。耳鳴り治療の進歩は確かに画期的ですが、マスコミが発信するとインパクトの強い表現に置き換わり、ご多分に漏れず誤解が発生しました。そこで、臨床現場の先生方に少しでも正しくお伝えしたいと思います。

    耳鳴治療が進歩したきっかけは、Jastreboffが1990年頃に提唱したTRT(tinnitus retraining therapy)という治療法でした。これは、耳鳴の苦痛発現は中枢での悪循環が主体であることに着目し、耳鳴に対する知的理解と音響療法によって、脳の可塑性を働かせて耳鳴の苦痛から抜け出すように導くものです。耳鳴診療に関わる耳鼻科医はその発想に共感し、日本でも広がりました。さらに、その音響療法のうち補聴器の効果が著しいこともわかってきました。そのあたりがテレビで取り上げられたわけです。

    日本の耳鳴診療を牽引する慶應義塾大学のデータによると、両側難聴患者に補聴器による音響療法を行った場合、「耳鳴の苦痛」はほぼ消失37%、著明改善33%、やや改善25%、さらに「耳鳴の大きさ」がほぼ消失30%、著明改善37%と、確実な成果を上げています。患者さんには、「耳鳴りの音を消し去ることを治療の目的にはできません」と言いますが、補聴器を適切に使用できれば耳鳴がほとんど気にならなくなる人は当院でも半数を超えます。

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