(千葉県 M)
【判定基準の粗さが在宅復帰に対する決断を容易にしてくれる】
世界的に汎用されるBIは,簡素,容易,明解といった,使用者の期待や理想を兼ね備えたADL評価法です。①切りのよい10項目で構成,②各項目の判定基準が2~4段階と簡素,③短時間で採点可能(評価対象者の自己報告や看護記録等に基づいた採点であれば数分内で完了),④結果は0~100点と感覚的にもわかりやすい,といった点が特徴です。
各項目の判定基準は,要介護高齢者の生活環境(入院や施設入居の場合を含む)が想定されていると思われます(表1)。そのため,在宅復帰が原則目標となる介護老人保健施設の入居者に対し,BIの使用は適していると考えます。一方,1人で社会参加できる高齢者では,BIは天井効果を示します。BIの100点は社会参加を基準とした自立ではなく,在宅生活を基準とした自立を意味するからです。
判定基準が粗いがゆえに,自立度の細かい違いや小さな変化が反映されない欠点もありますが,合計点の解釈に関する研究からは,40点以下が重度介助,60~80点が軽介助,85点以上が自立,とする大まかな目安も示されています。そのような意図で使えることこそが,BIの特色であると考えられます。介護老人保健施設では,退居時のゴールを設定する際の参考情報として,現病歴の前にどのようなADLであったか聴取されるかと思います。そのときの状態を知る人(ご本人含む)の記憶情報はしばしばあいまいです。そのような場合は,BIの基準の粗さが判定の決断を容易にしてくれます。
結果の解釈で注意すべきは,BIは動作を指示したときにできる能力を判定している点です。そのため,高齢者によくある不活発状態(自発性低下や他力依存性等)については,BIでは正確に表せません。ただ,こうした日常の不活発状態も,現場では広い意味でADL低下と解釈し,カンファレンス等での議論になるかと思います。入居者のADLを議論される際には,BIと同時に障害高齢者の日常生活自立度,認知症高齢者の日常生活自立度,Vitality Index等も併せて判定し,個人を多面的にとらえることをお勧めします。
【回答者】
八幡徹太郎 金沢大学附属病院リハビリテーション科科長