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日本人における血糖値・血圧・脂質の多因子介入による糖尿病合併症抑制効果

No.4935 (2018年11月24日発行) P.59

小倉雅仁 (京都大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学)

稲垣暢也 (京都大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学教授)

登録日: 2018-11-22

最終更新日: 2018-11-20

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【J-DOIT3の示したもの】

J-DOIT3(Japan Diabetes Optimal Integrated Treatment study for 3 major risk factors of cardiovascular disease)は日本人を対象として血糖値・血圧・脂質への介入と糖尿病合併症進展の関連を示した多施設共同研究である1)。主要評価項目の心筋梗塞,冠動脈再建術,脳卒中,死亡に対する強化療法群の従来治療群に対するハザード比は0.81(P=0.094)であったが,喫煙率などの補正後のハザード比は0.76(P=0.042)で有意なリスクの低下を認めた。また脳血管イベントのハザード比が0.42(P=0.002),腎症イベントのハザード比が0.68(P<0.001)と有意な低下を認めた。欧米では心血管疾患が合併症抑制の標的として重視されることに対して,日本人においては脳血管疾患と腎症が重要な標的であることが示唆された。重症低血糖に関しては両群とも発生率は1%以下で非常に少なく,わが国の実臨床における専門医の慎重な治療が反映されていると思われた。両群において悪性新生物の発症に有意差はなかった。

J-DOIT3はこれまで欧米人を対象にした検討が多かった血糖値・血圧・脂質の多因子介入による糖尿病合併症抑制効果のエビデンス2)をアジア人である日本人を対象として示したものであり,今後の詳細なサブ解析や,現在進行中である介入後の観察研究の結果も期待される。

【文献】

1) Ueki K, et al:Lancet Diabetes Endocrinol. 2017;5(12):951-64.

2) Gaede P, et al:N Engl J Med. 2003;348(5):383-93.

【解説】

小倉雅仁,稲垣暢也  京都大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学 *教授

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