日本医師会の長島公之常任理事は22日の定例会見で、医薬品について原薬の製造から製剤が患者の手に渡るまでの流通経路を追跡できるようにするトレーサビリティを確保する仕組みの必要性を訴えた。厚生労働省の「医薬品医療機器等制度部会」で議論を深めたいとしている。
先月、あすか製薬の高血圧治療薬「バルサルタン錠『AA』」の原薬に発がん性物質のN‐ニトロソジメチルアミンが混入していることが発覚。全ロットを自主回収していた。しかし、原薬は他社の工場で製造していたなどの理由から、原因究明が遅れている。
これについて長島氏は、「原因究明が後回しで良いということはあってはならない」と強調。原薬を製造した工場は現在も存在していることから、「仮にそこで原薬の不適切な製造工程が続いているとすれば、日本だけでなく世界中の患者が危険にさらされていることになる」と危機感を表した。その上で、「どれほど調剤されたかも判明していない」と問題視。トレーサビリティの確保による流通経路の透明化を求めた。今後、厚生労働省の「医薬品医療機器等制度部会」で、原薬から製剤まで医薬品の製造・流通に携わる関係企業の責任について議論を深めたいとしている。
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