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医業経営ツールボックス 開業編 Vol.7

◆Vol.7 第三者による医院承継開業時の留意点 (2)医療法人承継

医療法人の承継による開業を考えています。承継時の留意点を知りたいのですが。

承継予定医療法人の種類により違いがありますが、後継者不在により第三者に譲渡希望の場合、大半が現在は新規設立が認められない経過措置型医療法人と考えられます。(※平成19年以降は基金拠出型のみ設立可)

今回は二つの医療法人の内、経過措置型医療法人について主にご紹介します。
初めに、各医療法人の違いについて簡単に触れます。

●経過措置型医療法人
昭和63年〜平成19年の医療法改正時まで認められていた医療法人
・出資者の出資持分が認められる
・退職・解散時に残余財産を持分に応じ出資者に分配可能(法人の財産状況により出資額以上の分配が可能となる)

●基金拠出型医療法人
平成19年4月の第5次医療法改正以降に設立が認められた医療法人
・出資者の出資持分が認められない
・法人解散時の残余財産は国・地方公共団体・一定の医療法人に帰属し、出資者には分配されない。(ただし、定款に定めることにより出資額を限度に返還することは可能)

上記2種類の医療法人の現在での比率は、総数49,498施設中41,476件が経過措置型であり、基金拠出型は増加傾向にありながらも8,022件(平成26年3月31現在:厚生労働省資料)という現状です。
経過措置型は設立から20年以上経過しているものが多く、理事長の高齢化などにより後継者のない場合、解散や第三者への譲渡などの選択を迫られている状況です。そのため医療法人承継による開業をお考えの方には、今がその時とお考えください。

しかし「新設が認められない法人を承継することができるのか」という疑問をお持ちになる方もあるかと思いますが、経過措置型とは、まさに医療法改正による混乱を避ける為に当面は経過措置として継続は認められており、新規開設はできないながら承継は認められています
では、親族でない第三者がその承継を行うにあたり、具体的にどのような形式で行うべきかご紹介いたします。

経過措置型の医療法人譲渡とは、旧理事長(院長)の出資持分を第三者に譲渡(移転)することにより、理事長(院長)が交代することになります。(※譲渡前に法人社員の身分取得が必要です)ただし、第三者による承継の場合、単純に出資持分を買い取るだけでは完了ではありません。詳細な調査が必須です。下記に確認事項を列記いたしますのでご覧ください。

◆確認事項

Check 1 土地・建物は賃貸か、買い取りか。価格設定は適切か。
 土地が定期借地やすべてが賃貸という場合も考えられるので、要チェック

Check 2 医療機器・備品の査定は?
 特に医療機器に関しては、第三者譲渡が可能な型式か?リース契約か? 要チェック

Check 3 帳簿内容
 未収金・未払金等 要チェック

Check 4 医療法人定款内容確認

Check 5 帳簿上以外のマイナス資産はないか?
 医療訴訟・診療報酬請求ミスなど 要チェック

Check 6 従業員の引き継ぎは?
 承継にあたり継続雇用を希望された場合の対応には、退職金などの問題もあるため十分な検討が必要です。

Check 7 営業権の算定(のれん代)
 カルテの引き継ぎ、承継後の将来性はどのくらい見込めるか。今後考えられる融資申し込み時の金融機関の評価は、承継後の経営に大きく影響します。現在までの経営状況をふまえ、根拠のある正しい算定が求められます。

医療法人の承継は、非医療法人の承継と比べると官庁への提出書類も少なく理事長の交代のみで完了しますが、精査すべきものも多岐にわたります。
上記の点を十分に検討の上、適切な価格での承継を実現するためには、専門家の査定により交渉を進めることをお薦めいたします。
経過措置型医療法人を承継後に、基金拠出型医療法人(持分なし医療法人)への移行をお考えの場合は、経営編にてご紹介しておりますのでご覧ください。

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