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ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-06-16
石井榮一 (愛媛大学医学系研究科小児科学教授)
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  • ■疾患メモ

    ランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)は主として小児期にみられる組織球系疾患で,骨痛,皮疹,肝脾腫,リンパ節腫脹,尿崩症などを特徴とする。組織検査でCD1aとS100が陽性のLCH細胞の増殖を認める。

    単臓器(single system:SS)型と多臓器(multi system:MS)型に分類され,SS型は局所療法または化学療法,MS型は多剤併用化学療法が行われる。合併症も多く,適切な治療法が望まれる。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    症状は多彩で,出現に時間がかかることも多い。骨病変の頻度が高く,その他皮膚病変,肺病変,肝脾腫,リンパ節腫脹,尿崩症,低身長などを呈する。骨病変では骨痛が出現するが,X線写真で発見されることもあるので骨のX線検査は必須である。頭蓋骨,下顎骨,蝶形骨,椎体骨,大腿骨,骨盤骨に多い。

    皮膚病変は出血性丘疹,紫斑,小水疱,膿疱,脂漏性皮膚炎様皮疹,潰瘍,皮膚結節など多彩で,体幹や頭部に認められる。

    肺病変はX線上びまん性の線維化,播種性の結節性陰影,嚢胞性変化を呈し,気胸になることもある。

    その他,リンパ節腫脹や肝脾腫,腹水,黄疸,肝機能障害を認めることもある。

    眼窩内に浸潤すると眼球突出をきたし,その他口腔粘膜潰瘍,中耳炎,外耳炎,歯の異常なども認める。

    下垂体,視床下部への浸潤では成長障害や尿崩症をきたす。中枢神経症状として脳神経障害,精神運動発達遅延,小脳失調,振戦などがみられる。

    全身症状として発熱,倦怠感,体重減少を認めることがあり,骨髄浸潤により貧血,血小板減少がみられることもある。

    【検査所見】

    血液検査では可溶性IL-2Rが高値を示すが,浸潤臓器が存在する場合は肝機能異常や血球減少,進行例では播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)や血球貪食症候群などを呈する。

    画像診断では骨の単純X線が重要で,骨透亮像(punched-out)が特徴的である。その他,肺や肝脾,リンパ節などの浸潤臓器の判定にはMRIやCT検査が補助的に使用される。

    LCHは最終的には組織検査にて確定診断する。病変部位でCD1aとS100が陽性のLCH細胞を認めれば,診断が確定する。CD207(Langerin)も特異的なマーカーである。LCH以外の組織球症の鑑別も重要である。

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