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診療参加型臨床実習におけるStudent Doctor公的化に対する系統的準備教育の必要性[提言]

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  • 6 診療参加型臨床実習こそが医学部の価値を決める

    医師養成課程における診療参加型臨床実習の重点化は,医師国家試験にも反映されている。現在の医師国家試験では,臨床判断や鑑別診断などの臨床推論力を評価する「臨床問題」と,診療基本や臨床現場のルールを評価する「必修問題」が中心となる。

    必修問題は,医師としてのプロフェッショナリズムから基本的臨床手技,救急から緩和領域に至る臨床判断,法令順守まで幅広い範囲をカバーしている(図1)。必修問題の多くは,医療現場における“臨床的な”ルールや判断であり,「臨床実習中に何を学んだか」が評価される。すなわち,診療参加型臨床実習の充実こそが,必修問題克服による医師国家試験合格に大きく影響する。

    現在の医学教育は,「学修者が教育修了時点で何ができるか」というアウトカム基盤型教育により構築されている。そして,アウトカム基盤型教育の観点からも卒前卒後教育のシームレス化が提唱されている。日本医学教育評価機構(Japan Accreditation Council for Medical Education:JACME)により開始され,本学も受審・認証を受けた医学教育分野別評価でも,「診療参加型臨床実習のさらなる充実化と卒前卒後のシームレス化」が提唱されている10)。各医学部にとっては,シームレスな医学教育構築のために,医学生が様々な医行為から学ぶ診療参加型臨床実習と前後にある総括的評価OSCEの整備が喫緊の課題である。

    Student Doctorの公的化により,各医師の総合コンピテンシーの向上,医療レベル向上,さらには患者満足度の増大が期待される。診療参加型臨床実習およびPre-CC OSCE,Post-CC OSCEの円滑な運用には,カリキュラム統括部署のコーディネートとともに,教職員の理解および支援が必要不可欠である。継続的質改善により,診療参加型臨床実習におけるStudent Doctorの医行為導入が医療界全体に大きな貢献となることを祈念する。

    利益相反の開示:本総説の作成にあたり,著者全員に開示すべき利益相反は存在しない。

    【文献】

    1)鈴木英雄, 他:医のあゆみ. 2016;256(8):919-23.

    2)中田勝己:医教育. 2015;46(1):31-4.

    3)吉田素文:医のあゆみ. 2016;257(3):250-5.

    4)医療系大学間共用試験実施評価機構.
    https://www.cato.or.jp/aboutorg/index.html(ac-cessed on 2nd April, 2023)

    5)医学生が臨床実習で行う医業の範囲に関する検討会:医学生が臨床実習で行う医業の範囲に関する検討会報告書. 2022.
    https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000913643.pdf(accessed on 2nd April, 2023)

    6)モデル・コア・カリキュラム改訂に関する連絡調整委員会:医学教育モデル・コア・カリキュラム. 令和4年度改訂版. 2023.
    https://www.mext.go.jp/content/20230207-mxt_igaku-000026778_00001.pdf(accessed on 2nd April, 2023)

    7)中村優希, 他:日シミュレーション医療教会誌. 2021; 9:59-63.

    8)駒澤伸泰, 編:医学教育イントロダクション. 中野隆史, 監. 日本医事新報社, 2022.

    9)Komasawa N, et al:PLoS One. 2020;15(3): e0230792.

    10)駒澤伸泰, 他:日シミュレーション医療教会誌. 2022; 10:98-100.

    11)Komasawa N, et al:PLoS One. 2021;16(3): e0248569.

    12)医療系大学間共用試験実施評価機構:診療参加型臨床実習に必要とされる技能と態度についての学修・評価項目(1.0版). 2022.
    https://www.cato.or.jp/pdf/hyouka_1.pdf(ac-cessed on 1st April, 2023)

    13)厚生労働省:医学部の臨床実習において実施可能な医行為の研究報告書.
    https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000341168.pdf(accessed on 1st April, 2023)

    14)駒澤伸泰:実践! 医学シミュレーション教育. 野村岳志, 監. 中外医学社, 2019.

    15)日本医学教育評価機構.
    https://www.jacme.or.jp/(accessed on 1st April, 2023)

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