【質問者】
前野貴俊 東邦大学医療センター佐倉病院眼科教授
硝子体手術後の角膜障害は,手技の進歩によって頻度が減っていますが,今でも時に遭遇します。角膜上皮障害の発症には,涙液分泌減少と角膜知覚低下が関連しており,術前よりこれらを有している眼では発症リスクが高くなります。
涙液分泌減少眼では,防腐剤無添加人工涙液,ヒアルロン酸,ジクアホソル,レバミピド,自己血清などの点眼治療が第一選択となりますが,防腐剤をはじめとする薬剤性障害も考慮する必要があります。必要性の低い点眼を中止したり点眼回数を減らしたりすることが重要で,特にアミノグリコシド系抗菌薬や非ステロイド性抗炎症薬,抗緑内障点眼薬の投与は注意が必要です。遷延する場合は,上下涙点プラグも考慮されます。施行後に流涙が生じることがありますが,上皮障害が改善すればプラグの抜去も可能であり,もっと気軽に試みられてよい方法と思います。
糖尿病などで知覚が低下している場合,根本的な治療法はありませんが,点眼治療のほかに治療用コンタクトレンズ装用が有用な場合も多く経験します。コンタクトレンズにおいて,ある程度の効果はみられるものの,上皮障害が残存する場合は,羊膜カバーも考慮されます。
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