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強度近視[私の治療]

No.5194 (2023年11月11日発行) P.43

大西由花 (東京医科歯科大学眼科学教室)

大野京子 (東京医科歯科大学眼科学教室教授)

登録日: 2023-11-14

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  • 強度近視とは,一般に-6Dよりも強い近視を有する眼を指す。近視が強いという屈折異常のみで合併症がない場合には,眼鏡やコンタクトレンズ,もしくはその他の屈折矯正を行うだけで日常生活には支障をきたさない。しかし,近視による眼底異常を生じている眼は病的近視と呼ばれる。病的近視は,矯正視力0.1以下の視覚障害の13%を占め,緑内障につぐ失明原因である1)
    近視による視覚障害は,強度近視における異常な眼軸長の伸展に伴う網脈絡膜萎縮病変を主体とする近視性黄斑症や,近視性黄斑部新生血管(myopic macular neovascularization:近視性MNV),近視性牽引性黄斑症(myopic traction maculopathy:MTM),近視性視神経症(myopic optic neuropathy:MON)などの種々の眼合併症に起因する。現状では網脈絡膜萎縮病変に対する有効な治療法はないが,近視性MNV,MTM,MONに関しては,早期発見と早期治療によって,予防や治療がある程度可能である。よって,近視が強く,かつ矯正不能な視力低下を有する場合には,早めの眼科受診が望ましい。
    これらの中で,本稿では治療法が確立している近視性MNVに重点を置いて解説する。近視性MNVの発生頻度は病的近視の5.2〜11.3%であり,約1/3が半年間の間隔を経て僚眼にも発症する。退縮後に網膜色素上皮と基底膜の過形成からなるFuchs斑と呼ばれる色素沈着を伴った瘢痕病巣を形成する。これが黄斑部を障害し,比較的急速に黄斑萎縮に至ることが多い。無治療の自然経過では,5年以内で88.9%,10年以内で96.3%が,近視性MNV関連黄斑萎縮を主とする黄斑部障害から矯正視力0.1以下に至る2)。よって,早期発見と早期治療が視力維持に重要である。

    ▶診断のポイント

    【近視性MNVの症状】

    急に生じる矯正視力の低下,線が歪んで見える歪視,ものが大きく見える大視症,中心部が暗く見えること,などが挙げられる。

    【近視性MNVの検査所見】

    加齢黄斑変性(AMD)と同じく黄斑部に出血をきたす疾患ではあるが,近視性MNVは比較的小型で,滲出性変化も軽度であることが多い。中心窩およびその近傍に好発しやすい。

    近視性MNVの判定や活動性の判断などには,フルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)が優れている。近視性MNVは,FAでは初期より明瞭な過蛍光を認め,中~後期には蛍光漏出を認める。蛍光漏出の程度は,一般的にAMDに比べると控えめである。ただし,FAは侵襲性のある検査であるため,通常,視力低下や歪視などの自覚症状があれば,まずは眼底三次元画像解析(OCT)によるスクリーニングを行う。近視性MNVは,OCT上では網膜色素上皮上に広がる中~高輝度の隆起性病変として描出される。活動期にはMNV周囲の網膜下出血や網膜浮腫に伴う網膜厚の増加,囊胞様浮腫,網膜下液,フィブリン形成などの滲出性変化を伴う。また,活動性が低下すると,色素上皮の囲い込みから境界明瞭となる。再発時にはこの囲い込みが一部不鮮明となるため,患者の自覚症状悪化の訴えをもとにOCTを行うことで,蛍光漏出が少ない症例でも鋭敏に再発をとらえることが可能である。

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