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在宅療養患者の転倒予防と薬物療法のエビデンス【転倒予防にはビタミンD服用と通常歩行が有用。ビタミンDとビスホスホネートの併用で骨折抑制に効果】

No.4850 (2017年04月08日発行) P.61

中村治正  (なかむらクリニック院長/ 兵庫県神戸市垂水区医師会副会長)

藤井芳夫 (藤井内科クリニック院長)

登録日: 2017-04-05

最終更新日: 2017-04-04

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  • 在宅療養患者が急増する中,転倒骨折予防は在宅でのADL維持のためにも重要なポイントであると思います。また骨粗鬆症の予防と治療の目標である骨折の防止のためには2つの介入点(骨粗鬆症の予防,骨粗鬆症の治療)があるとされています。
    転倒予防と薬物療法のエビデンスに関して,藤井内科クリニック・藤井芳夫先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    中村治正 なかむらクリニック院長/ 兵庫県神戸市垂水区医師会副会長


    【回答】

    厚生労働省の調査によると,平均寿命と健康寿命の差は,男性が9年,女性は12.4年で,特に女性は,人生の1/7を要介護など自立していない状態で過ごしていると言います。骨折,転倒は,「脳卒中」「認知症」「老衰」に次ぐ要介護の主原因のひとつです。

    骨折の原因となる骨粗鬆症は,2000年NIH(米国国立衛生研究所)コンセンサス会議によると,「骨強度の低下によって骨折のリスクが高くなる骨の障害」と定義されました。骨強度は,骨密度と骨の質の両方を反映します。つまり,骨密度が減少して微細構造が変化し,骨代謝の回転の変化やコラーゲン等(骨質)の劣化により骨強度が低下し,骨折しやすくなる疾患です。
    主な骨折部位として,椎骨や大腿骨頸部があります。寝たきりの原因のひとつである大腿骨頸部骨折の3/4は,立った高さからの転倒によるものです。大腿骨頸部骨折は死亡リスクが高いことはよく知られていますが,椎体骨折もさらに死亡リスクが高い,と報告されています。

    治療の最大の目的は「骨折の予防」であり,そのために「食事療法」「運動療法」「薬物療法」が行われます。その中で神戸大学名誉教授の藤田拓男先生は「薬物療法のABC」として,A:カルシウム(カルシウムは骨粗鬆症治療の基本になるため),B:ビスホスホネート製剤,C:ルシトニン,D:ビタミンD,E:エストロゲン,F:フラボノイド,K:ビタミンK,P:副甲状腺ホルモンPTH,R:抗RANKL抗体,S:SERMと覚えやすく説明されています。骨粗鬆症の治療開始は「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン2015年版」で大きく改定され,既存骨折がある場合(椎体骨折,大腿骨頸部骨折がある。その他の骨折の場合は骨密度測定で基準値の80%以下),骨密度測定で基準値の70%以下,大腿骨頸部骨折の家族歴がある場合,などと緩和され,早期診断・早期治療が推奨されています。骨粗鬆症の治療薬は経済効率の高い薬物が多く,同ガイドラインでは各薬剤に関して,有効性の評価がA,B,Cで示されています。

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