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禁煙と減量の指導が「予防可能な死」をなくす 【喫煙・肥満による全身の慢性炎症に意識を向け,疾患発症前に予防することが重要】

No.4819 (2016年09月03日発行) P.55

宮尾 昌 (京都大学法医学)

玉木敬二 (京都大学法医学教授)

登録日: 2016-10-19

最終更新日: 2016-10-19

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法医学者が経験する解剖例の多くは,虚血性心疾患をはじめとした予防可能な病死例である。近年,虚血性心疾患は,喫煙や肥満が全身に引き起こす炎症の一臓器症状であることが提唱されはじめた1)

喫煙によるニコチンと一酸化炭素や,肥満による遊離脂肪酸と酸化LDLなどが活性酸素の放出を起こし,血管内皮の傷害やマクロファージなどの炎症細胞の過剰な活性化,血栓形成により急性心筋梗塞に至るのである。また,ほかの臓器では,脂肪織炎,腸内細菌叢の病的変化,自己免疫寛容の破綻などをきたし,脳血管障害,Alzheimer病,糖尿病,慢性腎疾患,非アルコール性脂肪性肝疾患,サルコペニアを発症させる。加えて,これら個々の疾患はお互いの危険因子でもあり,相乗的にリスクを増大させることから,患者の予後改善には,何よりも発症前の予防がより重要な意味を持つ。

したがって,これらの疾患を発症させないためには喫煙と肥満に対する介入,つまり,検診や外来での積極的な禁煙・減量指導に主眼を置くことが肝要である2)。個々の臓器を診るだけでなく,喫煙や肥満による全身の慢性炎症に意識を向けることが,虚血性心疾患だけでなく大多数の「予防可能な死」をなくすことにつながると期待される3)

【文献】

1) Cusi K:Gastroenterology. 2012;142(4):711-25.

2) Mozaffarian D, et al:Circulation. 2016;133(4): 447-54.

3) Danaei G, et al:PLoS Med. 2009;6(4):e1000058.

【解説】

宮尾 昌,玉木敬二 京都大学法医学 教授

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