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子ども中心の社会をめざして[エッセイ]

No.5153 (2023年01月28日発行) P.70

小橋孝介 (鴨川市立国保病院病院長)

登録日: 2023-01-29

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国は子どもを社会の真ん中に置くことを掲げ、子ども家庭庁を2023年4月1日に設置する。その中で、子どもの声を聴き、子どもが参加する仕組みづくりを進めていくことが示された。海外では、子どもの声を聴く子どもコミッショナーや子どもオンブズパーソンの仕組みができつつある。一方、日本では、社会的養護の中で育つ子どもの声を聴くアドボケイトの仕組みづくりは進みつつあるが、病気や障がいを抱える子ども、そしてその他すべての子どもから広く声を聴く仕組みはない。

子どもの声を聴き、子どもの代弁者としてアドボカシーを行うのは、医療に携わる専門職にも求められる重要な役割である。私たちはこのことに自覚的でなければならない。 

子ども中心の社会を築いていく中で、私たちは、子どもの権利についてどれだけ意識しているのだろうか。日本が子どもの権利条約を1994年に批准してから、もうすぐ30年が経過する。しかしながら、3万人に対する大規模な調査では8割を超える大人がその内容を知らず、その半分は名前さえ知らないことが示された。これが日本の実情である。

ユニセフの報告によると、日本の子どもはOECD加盟38カ国中、身体的健康は1位であるが、精神的幸福度は37位だった。このような背景のひとつには、子どもに対して一方的で、本来中心にあるべき子どもにしっかりと目を向けていない独善的な社会があるのではないだろうか。

体罰はその最たるものだろう。日本では5割近くの大人が体罰を容認している。2020年4月より、児童福祉法と児童虐待の防止等に関する法律において体罰は禁止された。体罰文化を変え、子ども中心の社会を実現していくためには、一人ひとりの子育てに寄り添い、体罰によらない子育てを支えられる地域の小児保健、医療の役割が大きい。 

子どもはいずれ大人になる。子どもの権利が守られず、声を聴いてもらえない社会で育った子どもたちが、大人になったとき、どのような社会を創るのだろうか。未来を創っていくのは子どもたちである。私たちの社会は、子ども中心の社会へと大きなパラダイムシフトが求められている。

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