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壇蜜さんの巻/土井善晴さんの巻/松本俊彦さんの巻[なかのとおるの御隠居通信 其の5]

No.5136 (2022年10月01日発行) P.64

仲野 徹 (大阪大学名誉教授)

登録日: 2022-10-02

最終更新日: 2022-10-03

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大阪をめぐる対談集『仲野教授の そろそろ大阪の話をしよう』(ちいさいミシマ社)を出版したくらいの対談好きで、依頼があればホイホイと引き受けてしまいます。立て続けに3人の方と対談する機会があったのですが、何の脈絡もなくいろいろな内容でというのが、いかにも私らしい。

壇蜜さんの巻 

なんでやねん! という声が聞こえてきそうだが、あの壇蜜さんと対談をしませんかというオファーがあった。壇蜜さんがいろいろな分野の人と話をした内容をまとめるという単行本の企画である。これを受けずにおらりょうか。新型コロナのこともあるしZoomでも結構ですというお話だったが、これはもうリアルしかありえない。

壇蜜さんと対談する予定やねんと話すと、何人もから同伴したいとの申し入れがあった。さすが大人気。もちろん却下。どうでもええけど、壇蜜さんはあくまでも壇蜜さんであって、壇さんと呼ぶ人は少ないような気がする。同じ壇でも檀ふみさんは檀さんというのが普通とちゃうんか。不思議といえば不思議やなぁ。などと思いながら、対談場所である某出版社の会議室へ。

対談内容は病気とか医学についてで専門外のことなのに、頭の回転がむっちゃ速い。真面目な内容だったが、ときどきいなされたりするのが楽しかった。なんとなく手玉にとられてるんちゃうかと感じながらも、2時間ほどがあっという間に過ぎていった。

帰りがけに、マネージャーさん曰く「どこで使っても恥ずかしい」タオルをいただいた。確かに使いにくいわなぁ、これは。バックパックの荷作りに手間取っていたら、使い古しですけどと、サミットストアのエコバッグをくださった。壇蜜さん使用済みのエコバッグ、せっかくなのにサインをもらわなかったのがかえすがえすも残念である。

 

土井善晴さんの巻 

次のお相手は料理研究家の土井善晴さんで、正確には対談というよりも「大阪ほんま本大賞」の受賞記念インタビューだった。大阪の本屋と問屋が「ほんまに読んでほしい」文庫本を選ぶそれほど有名ではない賞(失礼!)で、今年は土井さんの『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)が特別賞だった。日常の食事はご飯と具だくさんのお味噌汁だけで十分という斬新な提案の本である。

土井さんと面識があった訳ではないが、同じ大阪生まれで同い年ということで、編集者さんからお声がけいただけた次第。同じようなことを訊ねられることが多いので、今回は何を聞いてもらっても結構ですという素晴らしい事前連絡にテンションがあがる。対談でもインタビューでも、なにより重視するのは、お相手に楽しんでもらえること。さらに、これまで思ってもみなかったことを考えてもらえたりしたら最高だ。

前もって打ち合わせをしすぎると、ビビッドな感じが失われて面白くなくなってしまう。なので、できるだけしないことにしている。とはいえ、途中で話すことがなくなったら困るので、本などで対談相手のことを調べ、可能な限りたくさんのトピックスをメモして臨む。我ながら律儀やわぁ。

お好み焼き屋さんでの打ち上げでは、今日はいつもと違うことを考えたと言っていただけたので大成功! でも、翌日のツイッターでは「おもろいおっちゃんでした」と書かれてた。むぅ、同い年ですやんか。

松本俊彦さんの巻 

一週もあけず、今度はアディクション(嗜癖障害)治療を専門とされる精神科医・松本俊彦先生とZoomで対談した。『誰がために医師はいる─クスリとヒトの現代論』を、以前の本誌での連載「ええ加減でいきまっせ!」で取り上げたことがご縁でお声がけをいただいた。スポンサーはもちろん日本医事新報社でござる。ちなみに、そのエッセイは【誰がために×仲野】で検索いただければヒットするので、ご興味のある方はぜひご一読いただきたい。

タイトルからはちょっとわかりにくいのだが、松本先生の自伝的なエッセイ集で、長年にわたるご自身の治療経験に根ざした、薬物依存について目からウロコの考えが開陳されている。日本エッセイストクラブ賞をご受賞された時のお言葉にあるように、薬物の問題について「少しでも多くの方が、単なる『ダメ。ゼッタイ。』という思考停止から脱出することを願っています」というのが最大の主張で、読み応え満点だ。

肩書きは国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部長、恐ろしい麻薬取締官(イメージです……)に対してもはっきり物申されるような先生だ。本を読んだ印象でも、ちょっと強面かしらんと思っていた。けれど、本当にソフトで対談は大いに盛り上がり、ぜひ一度いっしょに飲みに行きましょうと締めくくらせていただいた。この対談は日本医事新報社のHPから配信中なので、ぜひご覧いただき、松本先生のお考えを知ってもらえたら嬉しい。

どれも本当に面白い対談でしたわ。すごく勉強になったし。対談の依頼ならいつでもなんでも引き受けまっせぇ、何卒よろしく。って、最後は宣伝になってしもた。


仲野 徹 Nakano Toru
大阪市旭区生まれ。1981年阪大卒。2022年4月より阪大名誉教授。趣味は読書、僻地旅行、義太夫語り。『仲野教授の笑う門には病なし!』(ミシマ社)大好評発売中!

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