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顎関節症

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
近藤壽郎 (日本大学松戸歯学部顎顔面外科学講座教授)
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  • ■疾患メモ

    顎関節症とは,顎関節や咀嚼筋の疼痛,関節(雑)音,開口障害ないし顎運動障害ないし顎運動異常を主要症候とする慢性疾患群の総括的診断名であり,その病態は咀嚼筋痛障害,顎関節痛障害,顎関節円板障害,変形性顎関節症などが含まれる〔日本顎関節学会:顎関節症病態分類(2013年)〕。

    顎関節症の範疇に入る病態または病変は,ほぼ類似した比較的単純な臨床症状として表現されるために,臨床症状のみから正確な疾病診断を下すことは難しい。このような事情から,関連し類似する臨床症候を顎関節症という病名を用いることによって,包括的に表現しているのが現状である。

    顎関節症は単一の疾病ではなく,また単一の発症機序が働いて形成される病態でもない。原因としては,複数の寄与因子とそれらが関連する複数の発生機序からなる多因子的な病態と言える。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    〈咀嚼筋痛障害(Ⅰ型)〉

    顎運動に関連する咀嚼筋群(咬筋,側頭筋,内側翼突筋,外側翼突筋)ならびにその他の筋(顎二腹筋,胸鎖乳突筋など)の筋・筋膜痛を主要症状とする。

    多くは咀嚼時の鈍い痛みとして現れ,筋の疲労感やだるさと表現されることもある。他覚的には筋の触診によって筋の凝りや圧痛が認められる。

    筋・筋膜の痛みは単一の筋に現れる場合と複数の筋,複数の部位に現れる場合,または両側に現れる場合がある。

    疼痛の出現は側頭筋,咬筋,顎二腹筋後腹に多い。筋痛に由来する開口障害が出現することがある。重度の場合は,頸部の筋特に胸鎖乳突筋ならびに僧帽筋の筋痛へと広がりをみせる。

    〈顎関節痛障害(Ⅱ型)〉

    顎関節の固有構造である関節包,靱帯,関節円板の過剰伸展や捻挫による顎関節軟組織構造の非感染性の炎症状態である。

    咀嚼時ならびに開閉口時に顎関節に限局した関節痛が現れる。開口障害が現れる。開口障害は,障害関節の防御機転としての咀嚼筋群の防御性協力収縮による。

    〈顎関節円板障害(Ⅲ型)〉

    関節円板の異常を主徴としたもので,特に関節円板の位置異常および変性を伴う形態の異常が原因となった顎関節疾患で,顎関節内障とも呼ばれる。関節円板は前方,前内方へと逸脱し,関節円板前方転位の状態を形成する。関節円板転位によって,下顎頭運動に伴う関節円板の挙動が変化することによって以下の2つの病態が形成される。

    復位性:この型では,閉口位において,関節円板は前方転位の状態をとる。しかし下顎頭が開口運動ないし前方運動をするとき,関節円板は一時的に復位する。この復位の瞬間に「コキン」といった雑音を生じる。この雑音は弾発音で,クリック音またはクリッキングという。続いて下顎が閉口へと戻るときに,関節円板は再び下顎頭の前方へとずり落ちるように転位し,元の閉口位における関節円板前方転位の状態となる。

    非復位性:この型では,Ⅲa型と同様に閉口位において関節円板は前方転位の状態となる。しかしこの型では,下顎が開口運動ないし前方運動をするときでも関節円板は復位ができない。すなわち開閉口位のいずれにおいても関節円板は下顎頭に対して前方転位の状態を維持する。この型では関節雑音の発生はなく,主症状は下顎運動時の関節痛で,顎関節の運動時痛と表現される。また関節痛の発生および前方転位した関節円板が障壁となって下顎頭の滑走運動が制限され,結果として開口障害が現れる。片側性の場合は,開口時に下顎は患側へ偏位する。両側性の場合は偏位しない。

    〈変形性顎関節症(Ⅳ型)〉

    変形性関節症は,関節面を構成する軟骨性構造の変性破壊に伴う軟骨下骨の変形によって生じる。顎関節においては,関節円板の変性破壊,側頭骨関節面の変形,下顎頭の変形としてみられる。Ⅲ型と併存する例が多い。また全身他部位の複数関節に同時に発生する多関節性変形性関節症に1分症として現れる場合もある。

    関節面の変形不整によって,円滑な下顎頭の滑走運動が障害されるため,開口障害ならびに「ザラザラ」「パチパチ」といった捻髪音が発生する。炎症状態が加わることで顎関節部の運動時痛が現れる。

    【検査所見】

    〈顎関節痛障害(Ⅱ型)〉

    MRIで,ほぼ正常の顎関節構造であり,関節円板前方転位(顎関節症Ⅲ型)がないこと,すなわち除外診断されることで確定する。

    〈顎関節円板障害(Ⅲ型)〉

    MRIによって関節円板の位置ならびに形態の異常を検出することで確定する。

    〈変形性顎関節症(Ⅳ型)〉

    単純X線像,パノラマX線像およびX線CT像において,顎関節の骨構造の変形として検出される。MRIによって関節円板の転位変形および破壊がみられる。

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