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単純ヘルペス脳炎

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
中嶋秀人 (大阪医科大学内科学Ⅰ・神経内科講師)
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  • ■疾患メモ

    単純ヘルペス脳炎は成人における散発性の急性ウイルス性脳炎の中で最も頻度が高く,起因ウイルスが判明したウイルス性脳炎の約60%,脳炎全体の中では約20%を占めるとされる。

    単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)にはHSV1型とHSV2型があり,単純ヘルペス脳炎はHSV1型によることが多い。

    発症機序として三叉神経節などに潜伏したHSVが再活性化して上行性に脳に侵入し,側頭葉や前頭葉に出血や壊死病変を生じることが考えられる。

    どの年齢にも発症するが,50~60歳にピークが認められ,性差はなく,発症時期の季節性もない。

    ■代表的症状・検査所見1)2)

    【症状】

    大部分は急性発症の様式をとり,時に亜急性の経過を示す。

    発熱,頭痛,倦怠感,上気道感染症状が高頻度に認められ,神経所見では頭痛,悪心・嘔吐,項部硬直など髄膜刺激症候と意識障害が高頻度に認められる。

    意識障害の程度は覚醒度低下から高度意識障害,幻覚・妄想,錯乱など意識の変容と様々であり,亜急性の人格変化や見当識障害を呈することもある。

    痙攣は4~7割と中~高頻度に認められ,片麻痺や記憶障害など局在徴候は低~中頻度に認められる。

    【検査所見】

    画像所見として側頭葉,前頭葉(側頭葉内側面,前頭葉眼窩,島回皮質,角回)に病巣が検出されることが多い。

    MRI所見として,T1強調画像にて等~低信号,T2強調画像とFLAIR画像にて高信号を示すことが多く,病初期では拡散強調画像(diffusion weighted imaging:DWI)が有用なこともあり,MRI検査ではT1強調画像,T2強調画像,FLAIR画像,DWIのすべてを施行することが望まれる。

    脳波検査では,片側性あるいは両側性の周期性複合波,振幅の減衰,焦点性あるいは全般性の徐波,焦点性てんかん性放電などが挙げられ,周期性一側性てんかん型放電(periodic lateralized epileptiform discharges:PLEDs)は30%程度に認められる。

    髄液所見では,リンパ球優位の細胞増多,蛋白増加を認め,糖は正常で,赤血球やキサントクロミーを認める場合もある。稀に細胞数正常や蛋白濃度正常の症例,また糖低下を示す症例もあり,注意を要する。

    確定診断にはウイルス学的検査が必須であり,髄液を用いたPCR法でHSV-DNAが検出されることが最も重要である。また,治療開始後は陰性化する可能性が高いため,治療前の髄液で検査を行う必要がある。

    HSV抗体測定では,髄液HSV抗体価の経時的かつ有意な上昇,あるいは髄腔内抗体産生を示唆する所見を確認する。

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