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工業・家庭用品等による中毒/自殺未遂

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-26
栗原智宏 (慶應義塾大学医学部救急医学教室)
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  • ■治療の考え方

    慢性に経過する中毒もあるが,ここでは急性中毒を扱う。異物誤飲など物理的障害を引き起こすもの,食中毒やアレルギーについては,それぞれ他項を参照。

    第一にこれらを疑う症例をみたときは,医療者の二次被害予防が重要である。

    どのような場合でも,他の救急患者と同様に呼吸循環動態の安定化を図ることが治療として最優先される。

    中毒物質のさらなる吸収を防ぎ,早期の体外排泄を促す。

    多彩な症状や検査所見がみられるので,中毒であることが明らかでない症例においても中毒の可能性を念頭に置く必要がある。

    起因する中毒物質に特有の解毒法もあるため,中毒物質の特定は重要である。しかし,物質が不明な場合も多く,その場合は一般原則にしたがって初期治療を行う。

    ■病歴聴取のポイント

    病歴聴取は最も重要である。誤飲以外にも,皮膚,眼,吸入など様々な経路で体内に入る可能性がある。以下の病歴聴取が必須である。

    特定可能あれば,中毒の原因となっていると考えられる物質の名称,濃度,量を確認する。

    経路や曝露時間など,曝露した状況を確認する。

    いつ曝露し,いつ・どのような症状が出現したか,時間経過を聴取する。

    曝露後にどのような処置を行ったかを確認する。

    来院までの症状の変化を聴取する。

    なお,意識障害がある場合や自殺企図の場合には病歴聴取が困難であったり,患者から得られた情報が誤っていたりすることも考えられる。本人に限らず,付き添いや発見者,救急隊などからの状況把握も重要である。個人情報には留意すべきであるが,状況がわかる者に電話などで連絡を取ることも考える。

    ■バイタルサイン・身体診察のポイント

    【バイタル】

    バイタルサインを正確に把握することは非常に重要である。呼吸数,脈拍,血圧,酸素飽和度のみならず,意識レベル,瞳孔所見,体温も素早くチェックする。心電図モニターは必須で,不整脈の出現に注意する。また,血糖値のチェックも早めに行うべきである。

    【身体診察】

    特に意識障害がある場合,外傷が合併している可能性を考慮し診療を進めるべきである。

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